2013年1月18日金曜日

RIOW ARAI 「Electric Emerald」


2007年作、八枚目。Libyus Musicからは四枚目。

四つ打ちテクノ作品である。
今までとまるで作風が違うのに、別名義リリースをしなかったのは『メリットを感じなかった』かららしい。
ならば、日本ビート学の権威が特有の歪なブレイクビーツを封印してまで、上モノ勝負を賭けてきた! と考えて良いはず。
だが元々は彼、YMOを真っ先に影響土壌に挙げる人。デビューが日本テクノレーベルの老舗・Frogman Recordsな人。しかも常に水準以上の質を提供出来る、作品に安定感のある人。作風の大変化に戸惑うコトなどない――
なんて聴く前、思ってマシタ。

今回はテクノという音楽の構造上、上モノはループ中心。それでもシンバルを左右に散らしたり、装飾音を左から右に通したりと、いつもながら細かい仕掛けは流々。音圧の良いヘッドフォンで聴くとかなり楽しい思いが出来るはず。
ただ、今回は久々に目を瞑り切れない難点も存在する。
普段の作風では、イレギュラーなビートをかわすようなタイミングでワンショットの上モノを打ち、その妙を味わわせてくれた。だが、シンプルビートに長尺ループのミッドテンポだと、例えばM-03のように噛み合わせ次第で何とももっさりしてしまうのだ。
また、今回全てシンセで取ったという音色は、ダサカッコイイのもあれば、あまりに月並み過ぎて音色の選択を間違えてるっ! と指弾したいのもある。
おそらく四つ打ちを意識し過ぎて、形に捉われてしまったのかも知れない。普段の作風ではジャンルを俯瞰してトラックを組める人なのに。

ココまでネガティヴなコトを書いてしまうと『お、駄作ゥー!』と勘違いされそうだが、ちっともそんなコトはない。
今までこれほどわくわくするようなイントロがあったか、と言いたいM-01。「Front Mission Alternative O.S.T.」期をアップデートしたようなM-02も秀逸だ。コレを含めた、エレクトロっぽい安くてねばっこいグルーヴの(俗に言う〝TB-303っぽい〟)ベース音色を用いたトラックは得手のようで、おしなべてカッコイイ。
しかもアルバム終盤に地味な秀曲を揃えているのも嬉しい。アッパー祭りとばかりに勢いで攻め切らず(それはそれで潔くて好きなんだけど)、こうした引きの美学で締める老練さもこのアルバムで彼が学んだ手管の一つだろう。

また数年後、このような四つ打ちテクノ路線を期待したい。たぶん凄いの来るよ。

M-01 Intro
M-02 Chocolate Derringer
M-03 Eternity Ring
M-04 Acid Samba
M-05 New Tube
M-06 Interface
M-07 Gps
M-08 Windy Grassy
M-09 Toys Boys
M-10 Brightness
M-11 Over Ground


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