インナーでM字開脚して誘惑するふしだらなルーク・ヴァイバートの、たぶんブレイクビーツ用ソロユニット、この名義では三枚目。1998年作。
何と、メジャーのVirginよりリリース。
この頃、UKクラブシーンは華やかだった。
CHEMICALやPRODIGYなどのビッグビート、MASSIVEやPORTISやTRICKYなどのトリップホップ、RONI SIZEやGOLDIEなどのドラムンベースが各々、全世界を巻き込んで全盛期を迎えていた。
さて一方、メインストリームのカウンターパーツたるリチャDと愉快な仲間たち――俗に言う〝コーンウォール一派〟は『俺たちは流行に染まらねえ』なんて片意地を張らず、何と『面白そうだ、演ってみよう』やら『こんなの俺たちも出来る』やら言わんばかりに、迎合姿勢を見せていた。しかも一大ムーヴメント化する一歩手前で戦列に加わる慧眼さで。
この通り彼ら――特にヴァイバートは、音への嗅覚が並外れている上に、どんな音にも適応し、的確に音のツボを押さえてくる器用さを持ち合わせている。
本作はほぼブレイクビーツをボトムに敷き、お得意のアシッド風味を極力抑えた、明快な構成となっている。
時には上モノのフィルターを濃い目に掛け、スモーキーに。たまーにやっぱり止められない大好きなアシッドフレイヴァーを隠し味に。例の如く、可笑しな声ネタを頻発して楽しげに。
また、M-03のような、808ちっくなベースラインと煌びやかで幻想的な上モノを巧く織り合わせてドリーミーに。M-06のような、おげふぃんなジョークトラックもさらりと織り交ぜて煙に巻き。M-11のような、スクプなトムくんばりのイカしたベースラインを軸に、さまざまな音色を織り込んで重厚に。
その他、ところどころさり気ない細工を弄してフックを与え、各トラックにヴァラエティも与えつつ、全体像を散漫にさせないこの手腕、兄貴分のリチャD以上だ。
ただ、ガツガツしてなそうな人柄からか、シーンに風穴を開ける名曲や、後に語り継がれるであろう傑作アルバムを創り得ないのは……致し方ない。
それでも、誰ぞのように戻って来ず、誰ぞのようにレーベル運営に感けず、誰ぞのように枯れず、頻繁に〝良質な音源〟という名の便りを届けてくれるルーク・フランシス・ヴァイバートは、シーンきっての〝秀才〟だと思う。
本作はそんな彼が創り上げた数多の音源の中でも〝代表作〟に位置する、と筆者は考えている。
M-01 Fly Swat
M-02 Crazy Disco Party
M-03 Tally Ho!
M-04 Memory Towel
M-05 Shimmering Haze
M-06 Juicy Luke Vibert
M-07 Piano Playa Hata
M-08 Workout
M-09 Rendleshack
M-10 Lovely
M-11 My Organ In Your Face
M-12 Musical Box
M-13 The End
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