奇々怪々。鬼沢卓(きざわ たかし)によるソロユニット、2006年作・二枚目。
もちろんSince 1997、自ら設立に関与したRevirthより。
鉄板の上で鉄球を弾ませたかのようなビート。記譜化を拒絶するメロディ徹底排除の上モノ。左右の中耳で揺らぎ、吹き荒び、蠢く、むず痒き卓加工――
これらが前作よりクリアな音像で繰り広げられていることを素直に喜ぶべきだ。
むしろ本作は、創り手側が聴き手側に幾許か歩み寄ってくれた感もある(それでも十分アクの強い、聴き手を選ぶ音楽性なのだが)。
それは何も、音質が良くなっただけではない。
まずは、唯一無二のNUMBサウンドの根幹たるビートがマイルドになった。
何の衒いもなく、ボトムに四つ打ちを敷くトラックもある。M-08では、彼独自の音世界が固まる前に演っていたドラムンベースをふと思い出したかのようなビートを披露している。
よってボトムがソリッドになり、驚くべきことにノレるようになった、と。
加えて、全体的な構成が心なしかループ感を大切にするようになった。
常にアクセントを入れることで聴き手の脳裏に引っ掛けていくだけでなく、反復の魔力で聴き手の脳裏に刷り込めるようにもなった訳だ。
よって上モノがソリッドになり、驚くべきことにノレるようになった、と。
この考え方はやはり、彼もクラブ界隈の住人。
もちろんNUMBがNUMBたる音世界を堅持したまま、この意識改革を成功させている。付け焼刃の音感では成し得ない前進だろう。
まずはコレを先に試してから前作に移ると、『(一作目は)言うほど難解じゃなくね?』なんて嗜好誘導も出来る優れモノ。
音源漁りは後出しジャンケンくらいがちょうど良い。
M-01 色 -Shiki-
M-02 泥 -Doro-
M-03 慧 -Satori-
M-04 観 -Kan-
M-05 昊 -Sora-
M-06 廻 -Meguru-
M-07 依 -Yoru-
M-08 結 -Musubi-
M-09 慈 -Itsukushimi-
M-10 空 -Kuu-
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