NADJAだけでなく、ソロ活動に別プロジェクトとフットワークの軽さを見せるエイダン・ベイカーが何とドラムスティックを握り、ベーシストのドリアン・ウィリアムソンと組んだスラッジデュオの2013年初作品。ベイカー懇意のベルギー発:Consouling Soundsより。
Aidan+Dorian=ADORAN、ね。
(自身を含め)総勢十七名のドラマーを迎えた2012年1月のソロ作から、〝オーガニック〟を謳った2012年10月のNADJA作品に至る流れからして、ベイカーの中で人力ビート熱が高まっているものと思われる。
それなら本来、彼はギタリストというよりはマルチプレイヤー(というよりも作曲家)なので、『俺が全編ドラムを叩いた作品を創りたい』と考えるのも当然の帰結。(というよりは元々、打ち込みビート構成の工夫のなさからして〝打ち込みは人力の代替〟としてしか見ていないっぽい)
さて、ベイカー作品で二曲となると当然、M-01が27:22、M-02が30:09と長尺。
リズム隊でのデュオ編成らしく、コード弾きのベースが地べたをごろごろ這いずり回る主旋律を担い、ドラムがそれを支えつつもがんがん鞭打ってメリハリを付けていく――そう、あのミッドテンポでひたすら引きずって引き伸ばして、次第にフレーズを移り変えていく暗黒音楽系の牛歩サウンドがココでも展開されている。
引き、満ち、引き、また満ちる――この終わりそうで終わらない弛まぬ緊張感なら、思ったより長さを感じないはず、当ブログの読者様なら。
そこで想起されるのが、同じカナダ出身のポストロック共同体:GY!BE周り。
双方まるで絡みはないが、こうしてコミュニティ内で音を完結させる如何にもポストロック人らしいGY!BEと、人脈を広げることで音楽的領土を拡大していくハードコア派生系音楽人のベイカー(ただし、彼のバックボーンはシューゲイザー)の点と点を結んでみるのも、強引だが面白い。
この音世界なら、ベイカーのドラムにもっと安定感やビート構成力やパワフルさを求めたくなるなあ、なんて思ったりもするが、そこは難癖なので黙殺。現在はドイツに住んでいるベイカーに、メイプルリーフを感じられただけで良しとする。
なお、本作は2012年の6月にベイカーの元地元・トロントで録られた。マスタリングは地下音楽御用達の兼業ミュージシャン:ジェイムズ・プロトキンによるもの。
M-01 Careful With That Death Machine
M-02 The Aviator