2013年5月14日火曜日

HANGEDUP 「Kicker In Tow」


カナダはモントリオール発、ヴィオラのジェネヴィーヴ・ヘイステックと、ドラムのエリック・クレイヴェンによる男女デュオ、2002年作の二枚目。

モントリオールでポストロックなら、GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR人脈だろ! と察した方は鋭い。本体参加はないものの、そのサイドプロジェクトでしばしば名を連ねているこの二人、他に二つのプロジェクトで顔を合わせている間柄ゆえ、息の合った緊張感のある演奏が期待出来る。
録音はテープで行われ、技師はやはりGY!BEのエフリム・メナック。

さてこうなると、出て来る音はやはりモントリオールの御柱同様、満ち引き激しいあの路線。ギターもヴァイオリンもベースもチェロも同じ弦楽器だろ! と口角泡を飛ばし、じわじわテンションを上げていくアレ。
ならばたった二人で、あの人海戦術音楽は無理だろ! と思われるかも知れないが、これが何ときっちり二人で演れている。ゲストは、M-06でハリス・ニューマン(本作のマスタリングも担当)がベースを弾いているだけ。
となれば当然、オーヴァーダブ。ヘイステックのヴィオラの音が二つ以上聴こえる時もあるが、全部私が弾いてるんだから問題ないよね、と言わんばかりにテンションの高い曲ではがつがつ音を盛り込み、上の隙間を埋めていく。
一方のクレイヴェンも然る者。オフロードな前のめりビートで緊張感のあるボトムを演出する。しかも、ドラムヘッドを叩き割らん勢いで。
そんな上と下を癒着させる低音は要らない、デュオなのだから。あえて外すことで、上下の音を際立たせる意味があるから。
無論、テンションが高いばかりでなく、感性に基づいて音符をひっそり置いていく曲や、ドローンノイズっぽい展開もある。それらがあるからこそ、爆発的な曲への増幅効果も見込めるし、デュオ編成らしい音の隙間の有効活用も出来る。
そこらは海千山千。抜かりはない。

GY!BE関連としては短い、五・六分程度で終わる曲を並べているので、どうも閉鎖的でとっつきづらいモントリオールシーンを感じるのにもってこいの入門盤では。

M-01 Kinetic Work
M-02 Sink
M-03 Losing Your Charm
M-04 View From The Ground
M-05 Moment For The Motion Machine
M-06 No More Bad Future
M-07 Motorcycle Muffler
M-08 Automatic Spark Control
M-09 Broken Reel


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