2003年作、四枚目。
マッシュルームことアンドリュー・ヴォウルス脱退後初のアルバム。ただし、ダディGことグラント・マーシャルは育児休暇により本作不参加。実質、3Dことロバート・デル・ナジャと、前作よりプロダクションに関わるニール・デイヴィッジのアルバムと言える。
その3D、本来ココにいるはずのダディGとは、トラックの創り方がまるで違う。
ダディGはざっくりとトラックの基礎を決めてから、感覚的に形作っていくタイプ。一方の3Dは、とにかく神経質に細部まで卓で弄って弄って弄り倒すタイプ。
もうお分かりであろう。
本作は3Dの偏執的な創り込みぶりが如何にも発揮された、静謐な音像なのになぜかうるさい、彼の執念の結晶である。
両耳の鼓膜を弾くキック。左右、鳴らす位置が安定しない装飾音。飛びかけの蛍光灯の如く、常に揺らぎ続ける副音――
デイヴィッジすらあきれて見守るしかないくらい、これでもか! と音が詰め込まれ、弄り倒され、入り乱れ、脳内で拡散し続ける。
各音色を把握しながら聴くと、ほんっっっとに疲れるアルバムである。
〝冷たい〟やら〝無機質〟やら言われ、『ダディGが(ストッパー役として)居ればこんなに(鬱陶しく)ならなかった』と罵るファンが居るのも、残念ながら当然とも言える。
ただ筆者は、この過剰な音響工作が徒労だったとは思わない。聴き方を変えれば、こんな痒いところに手の届くアルバムもないとすら思える。
さてここで逆転の発想。ぼけーっと垂れ流して聴いてみよう。
例えばベッドに横たわって、目を閉じ、各音色を肌で感じ、身体を溶かすつもりでリラックスすると、まるで音に愛撫されているかのような心地を味わえる。
しかもM-09の8:17の後、30秒空白を取ってからの、パルス波のような音が単体で揺らぎ続けるミニマルドローン曲に癒しを感ずるはず。
それもこれも、気持ち良い音を気持ち良い場所に配置する、匠の技術の賜物。
要はちゃんと実の伴った凝りっぷりだというコト。
Don't Think, Feeeeeeel!!
M-01 Future Proof
M-02 What Your Soul Sings
M-03 Everywhen
M-04 Special Cases
M-05 Butterfly Caught
M-06 Prayer For England
M-07 Small Time Shot Away
M-08 Name Taken
M-09 Antistar
お約束のゲストヴォーカル紹介コーナー。
今回は少数精鋭。M-02、04、06はコレで一世を風靡した反骨のスキンヘッド女性SSW:シネイド・オコーナー。〝Voice Of Massive〟ホレス・アンディはM-03と08で。
残りはすべて3Dがヴォーカルを執っている。
また、M-07ではバックコーラスにGORILLAZの2Dことデーモン・アルバーンが参加し、二次元・三次元タッグを結成している
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