2011年7月14日木曜日

DAVID HOLMES 「Let's Get Killed」


北アイルランドはベルファスト出身の英国人による1997年作、二枚目。

彼は後にオーシャンズシリーズ(111213)や「アウト・オブ・サイト」などのスティーヴン・ソダーバーグ監督作品や、「Code46」「戦争のはじめかた」などの英国映画の音楽を手掛けて有名になるが、現時点ではまだ一介のトラックメイカー。
M-07では図ったように「007」のアレ、M-12ではフランスの変態紳士:セルジュ・ゲンスブールの曲を取り上げるなど、ラウンジっぽいオサレ臭のするブレイクビーツかと聴いていたら、制作秘話を知ってびっくり(もしくはドン引き)するコト必至。

若干十五歳でDJを始めたホルムスは十七の時、NYのサウスブロンクスを旅行している。
そこで彼はDATレコーダーを持ってワシントンスクエアやセントラルパークをうろつき回り、たむろする輩に話し掛けてはテキトーに喋らせ、その与太話を録音していった。
――売春婦やポン引きやドラッグディーラーの。
『八人もの屈強な男に追っ掛けられ、必死で逃げたよ。俺の持ってるDATプレイヤー目当ての奴らからな (本人談)
それから約十年後。彼は後生大事に取っておいたその〝思ひ出テープ〟を切り張りし、本作を創ったという訳だ。

もっともこのアルバムは、そんな身体を張ったネタ任せの作品ではない。
当時流行っていたドラムンベースを自分流に解釈したM-03。場末のキャバレーで痛飲→泥酔の顛末を描いたかのようなM-11。ロンドンのオーケストラを招聘し、お得意のダルなブレイクビーツロックとの融合を図ったM-12など、その実力は現時点で既に開花していたと言って良い。
現に(本作と同時進行だったのかは分からないが)翌年、早くも念願の(!?)映画音楽の仕事が舞い込むこととなる。アルバムデビューからたった三年の大躍進である。
もちろん背伸びなどではないのは、本作の出来からして察せられよう。

追記として、TWO LONE SWORDSMENのキース・テニスウッドがM-02、03、04、06、09で、主にエンジニアとして参加している。
推測だが、M-05の〝Drummer Unknown〟なる不思議なクレジットは、例の思ひ出テープに入っていたストリートドラマーの音を拾って加工したがためと思われる。

M-01 Listen
M-02 My Mate Paul
M-03 Lets Get Killed
M-04 Gritty Shaker
M-05 Head Rush On Lafayette
M-06 Rodney Yates
M-07 Radio 7
M-08 The Parcus & Madder Show
M-09 Slashers Revenge
M-10 Freaknik
M-11 Caddell Returns
M-12 Don't Die Just Yet
M-13 For You


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