居住地をブラジルはサンパウロに変えたシカゴジャズシーンの顔役、ロブ・マズレク大将が、太鼓叩きのマウリーシオ・タカラと組んだ2006年初作品。
レーベルはシカゴのAesthetics(音量注意)。
クレジットには古馴染みのジョシュ・エイブラム(TOWN AND COUNTRY、THE ROOTSなど)やチャド・テイラー(CHICAGO UNDERGROUND系)の名も見られるが、ほとんど現地のブラジリアンミュージシャンで固めている。
いや、〝固めている〟という表現はこのプロジェクトを語る上で適切ではない。クレジットにおけるテイラーのパートが〝Short Drum Sample〟な点で何となく察して欲しい。
何しろ、ゲストプレイヤーなど音のパーツでしかないのだから!
卓! 加工! エディット! ミックス! オーヴァーダブ!
大将はご親切にもタイトル曲のM-01でさっそく、このアルバムのあり方を示している。ヘッドフォンをご用意を。
サウンドチェックのような声から、ぱらぱらとタカラのドラムと大将のコルネットが鳴り始める、左右のチャンネルで別々の音が。フリージャズどころの話ではない。ポリリズムにすらなっていない。二人の捻り出す〝音色ども〟が聴き手の脳内のあちこちで揺さぶりを掛け、混沌の坩堝へと落とし込む。
いいかい? 〝演奏〟じゃなくて〝音色〟だよ、と。
それがようやく霧散し、全ての音が止んだ後……一発で誰が吹いているか分かるコルネットが響き、ラテンの肉感的なビートがそれを後押しするM-02が弾けた瞬間、聴き手毎の本作における評価が決まると思う。
ただしこの曲は二層構造で、中間部に編集の賜物であるドローンノイズを噛ませてある。そこから再び肉感的なビートとコルネットがフェイドインで戻って来て締める、まるで楽団が町内一周パレードしたような素敵曲! と思える方は、おそらく本作を気に入っていただける方なのではなかろうか。
以後、アンサンブルでは味わえないテクスチャの妙を存分に堪能出来る。
ビート感が明らかにラテン風味なので、CHICAGO UNDERGROUND系とはきちんと差別化が計れているし、エディット感はこちらの方が強いくらいだ。
マズレク大将がジャズを多角的に視ているコトが分かる秀作。
ただし! 次はエグいよ。本作が洗練されている、と言いたくなるくらいね。
M-01 Sauna: Um, Dios, Tres
M-02 Pombaral
M-03 The Realm Of The Ripper
M-04 Olhosss...
M-05 Afrihouse
M-06 Black Liquor
M-07 Balao De Gas
M-08 Numa Grana
M-09 O Armarinho (Bonus Track For Japan)
M-10 FSY (Bonus Track For Japan)
日本盤は、ボートラのM-09が本編であるM-07の終いから続くへんてこな声ネタループを引き継いで大将の寂しげなコルネットが乗る連動性のある曲なので、ちょっとしたお徳盤。ないよりあった方が良い程度だけど、筆者はこちらを薦める。
M-10もアレだしね……。
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