2012年2月20日月曜日

TARANTULA HAWK 「Tarantula Hawk」


サンディエゴの暗黒プログレハードコアトリオによる二枚目。2002年作。
レーベルはかのNEUROSISが運営するNeurot Recordings。数多くの実験的ハードコア音楽を送り出している妖しいトコ。

彼らの音世界も例に違わず実験的。
五つのトラックは完全に連動されており、実質七十四分ワントラックアルバム。しかも1stと本作の間に噛ませた二枚の自主流通音源(CD-R)も、やはりワントラック。たった五分で世界を表せるか! とでも言わんばかり。
おまけにご覧の通り、本作には曲名がない。1stにもない。しかも本作も1stもセイムタイトル。曲に命名する意思がまるでない。
しかも掛け声一つ入らない純粋なインストアルバム。
これはもう、音楽に言霊を宿すことを拒絶しているとしか思えない。

だが音楽に、そのような象徴めいた存在など要らないのかも知れない。極論を吐けば、歌や歌詞のような象徴的なモノはかえって音楽の邪魔になる場合もある。
彼らの場合、歌詞を乗せた声など髪の毛一本の隙間すら入り込む余地がない。
そんな音の構成は〝Key or Gu〟と〝Ba or Key〟と〝Dr or Gu〟。それらが場面に応じて楽器を切り替える慌しい編成だ。しかも1st期は更にベーシストが在籍するツインベース形態だったという。
残念ながらそのベーシストは家庭の事情により脱退。残されたメンバーは「あいつの代わりなんて、誰にも勤まらないぜっ!」と後任を置かず、このようなシャッフル編成になった、という泣かせる熱いエピソードがある。

だからか、低音が足らないような気がする。
それどころか、ドラムの手数は多いもののビートの粒が安定していないやら、ギターのフレージングが埋もれるほど地味やら、それ以上にキーボードがしゃしゃり過ぎやら、ベース(の存在感)がたまに消えるやら、筆者が思いつく限りでいくつも難癖が飛ぶ。
だが幅を利かせているだけあって、キーボードのスリリングな旋律は特筆モノだ。蜂が編隊を成して聴き手の鼓膜へと襲い掛かる――そんな戦慄を与えてくれる。
もちろんその戦慄も、強弱のダイナミズムを重視して繰り広げられる楽曲により齎される、あくまで副産物。約四十分間を飽きずに聴き通せる構成力は空恐ろしい。

目に付く欠点はちょぼちょぼあれど、それ以上に期待値も大きい〝上積みも見込める〟バンドだったのに、本作が(公式)ラストリリース。
「あいつの代わりなど~」みたいな熱いコト言える情熱の持ち主どもならさ、石に噛り付いても継続して欲しかったなあ。未完成で散るのは惜し過ぎる。

M-01
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M-03
M-04
M-05

つか! 最後のトラック(49分41秒)の20分以降、ただ持続音が鳴ってるだけってのマジで止めれ。最後、たった一秒でも何か演るだけで残りの約三十分間に意味が出るのに、そのままCDが止まりくさる。
掃除機のぶーんという稼動音に意識を集中させて酩酊する残念なお子様かよ!


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