〝音色の魔術師〟キエラン・ヘブデンによるソロユニットの編集盤。2012年九月発表。たった八曲だが、ちゃんとランタイムは60分あるのでご安心を。
まず資料的な詳細。
ヘブデン自身設立のText Recordsで切られた12inchヴァイナル音源などを集めた一枚。欧州では.flacや.mp3形式で発表されたが、CD化は今のところ日本盤のみ。
内訳は、2011年三月にDAPHNIとのスプリット盤からM-08を皮切りに、同年九月のM-01と06、翌2012年五月のM-03と04、六月のM-05。残りM-02と07は後、十月発売。
その内、M-01と06はミックスCDの定番「Fabliclive」(2011年)でも披露されている。
気になる音世界は、「Ringer EP」から「There Is Love~」のシンプルビートに味わいのある上モノ路線。独特で抜群の音色センスは健在で、親指ピアノ(カリンバ)やへんてこな声ネタを、違和感なくトラックへ溶け込ませている。
作中に通低する、なにげない古臭さやダサっちさも味!
ただしその古臭さ、ダサさに直結する音色使いのセンスがブリープテクノからIDM(Intelligent Dance Musicの略)期のWarp連中をちらほら想起させる点は、苦笑すべきか眉根を寄せるべきか。
でもさすがはヘブデン先生、スカなど掴ませない充実のラインナップ。
四つ打ち主導のアルバムながら、クラブで流すにはやや地味。でもその分、聴き込んで旨味がジューシーなのは、気持ち良い音色を無理せず編み込むテクスチャーの妙か。そうなると、本作は「There Is Love~」の後へ来るに相応しいアルバムとなる。
さて今後、コレが総決算で次から新機軸を打ち出していくのか。単なる通過点で、この路線を更に深化させていくのか、非常に気になるところ。
M-01 Locked