2012年9月30日日曜日

FOUR TET 「Pink」


〝音色の魔術師〟キエラン・ヘブデンによるソロユニットの編集盤。2012年九月発表。たった八曲だが、ちゃんとランタイムは60分あるのでご安心を。

まず資料的な詳細。
ヘブデン自身設立のText Recordsで切られた12inchヴァイナル音源などを集めた一枚。欧州では.flacや.mp3形式で発表されたが、CD化は今のところ日本盤のみ。
内訳は、2011年三月にDAPHNIとのスプリット盤からM-08を皮切りに、同年九月のM-01と06、翌2012年五月のM-03と04、六月のM-05。残りM-02と07は後、十月発売。
その内、M-01と06はミックスCDの定番「Fabliclive」(2011年)でも披露されている。

気になる音世界は、「Ringer EP」から「There Is Love~」のシンプルビートに味わいのある上モノ路線。独特で抜群の音色センスは健在で、親指ピアノ(カリンバ)やへんてこな声ネタを、違和感なくトラックへ溶け込ませている。
作中に通低する、なにげない古臭さやダサっちさも味!
ただしその古臭さ、ダサさに直結する音色使いのセンスがブリープテクノからIDM(Intelligent Dance Musicの略)期のWarp連中をちらほら想起させる点は、苦笑すべきか眉根を寄せるべきか。関係ないけど、M-08などFILA BRAZILLIAかと思った。

でもさすがはヘブデン先生、スカなど掴ませない充実のラインナップ。
四つ打ち主導のアルバムながら、クラブで流すにはやや地味。でもその分、聴き込んで旨味がジューシーなのは、気持ち良い音色を無理せず編み込むテクスチャーの妙か。そうなると、本作は「There Is Love~」の後へ来るに相応しいアルバムとなる。
さて今後、コレが総決算で次から新機軸を打ち出していくのか。単なる通過点で、この路線を更に深化させていくのか、非常に気になるところ。

M-01 Locked
M-02 Lion
M-03 Jupiters
M-04 Ocoras
M-05 128 Harps
M-06 Pyramid
M-07 Peace For Earth
M-08 Pinnacles


2012年9月28日金曜日

ELECTRIC WIZARD 「Come My Fanatics....」


出ました大英帝国大麻導師! イングランド南部・ドーセット出身の(当時)三人組スラッジコアバンド、1996年作の二枚目。
リーダーのジャス・オーボーン(Gt.Vo)に、後に袂を別つBaとDs、というシンプル編成。
なお、CRIPPLED BLACK PHOENIXのジャスティン・グリーヴス(Ds)が加入し、さっさと脱退するのは本作の次の次のそのまた次(2004年)のアルバム。

当アルバムは〝世界一重いアルバム〟と評されて久しい。
極度のダウンチューニングからひたすらリフを引きずり、聴き手の心に負の感情を刻印するそのサウンドは、ヘヴィ音楽に耐性のない方は避けて通った方が幸せかと思われる。
ただ、このバンドの本質がヘヴィさだけではないとしたらどうする?
むしろ筆者は、レーベルオーナーがあきれてしまうほどマリファナ好きの快楽主義者が目指す至高のトリップミュージック=サイケバンドだと思うのだが。

曲が概ね長いとか、オーボーンがファズを使いたがるとか、その彼の歌唱が如何にもなヘタウマ的だらしなさとか、スピリチュアルでスペイシーなインスト・M-04が明らかにソレモンの曲だとか、定型的なサイケ色は枝葉でしかない。
本作は2006年再発時にリマスターを施しているのだが、その改変ぶりがあまりにも露骨にトバし目的なのだ。
M-05を聴いて欲しい。
この筋特有のもこもこした音像の中、オーボーンとベーシストの超ド級重低音リフと、ドラムのモタってるんだか踏み止まってるんだか分からないべしゃっとしたビートへ、水泡が弾けるような電子ループを噛ませたこの曲。旧盤ではほぼ埋もれてしまっているのだが、リマスター盤ではそのループの音量が作為的に大きくなっている。それはもう、バンドの演奏を妨げん勢いで。
――明らかにこの音を耳で追え、と言わんばかりに。
結果、ずるずる反復演奏とのマッチアップで、聴き手の視点がどんどん定まらなくなってくる。こそばい鼓膜が、次第に快楽(けらく)へと蝕まれていくはずだ。

音による圧殺を目的としがちなこの界隈では思ったより居ない、音による快楽を推進するバンドとしてあえて、当ブログでミスマッチな彼らを扱った訳だ。

最後にもう一度。「ヘヴィ耐性のない方は興味本位で触れるべからず」
ただ、耐性というのはあくまで己が勝手に定めた感度の限界値であって、本来身体がどこまで耐え得るか、本人さえも知る由がないのかもよ。へへへへ……。

M-01 Return Trip
M-02 Wizard In Black
M-03 Doom Mantia
M-04 Ivixor B / Phase Inducer
M-05 Son Of Nothing
M-06 Solarian 13
M-07 Demon Lung (Bonus Track)
M-08 Return To The Son Of Nothing (Bonus Track)


2012年9月26日水曜日

PIVOT 「O Soundtrack My Heart」


オーストラリアはシドニー出身、リチャードとローレンスのパイク兄弟に加え、同国パース出身のデイヴ・ミラーからなる技巧派トリオの二枚目。2008年作。
Warp Recordsは彼らと十六枚ものアルバム契約を交わしている。すげー。

音世界はローレンスの方が叩き出す輪郭のはっきりした強烈なビートへ、キーボード、ギター、ベース、パーカッションなどの演奏と、主にミラーが生成する打ち込みやグリッチを和えるポストロック。
ただし、まだ二枚目ともあって借り物っぽい雰囲気もなきにしもあらず。
具体的に挙げれば、M-05の反復ギターワークはBATTLESを思わせるし、M-08ではもろにTORTOISEっぽさのあるフレーズが顔を覗かせている。
まあそんな部分は単なる難癖であって、時間が解決してくれるモノだというコトは当ブログでさんざん語ってきた訳で、これ以上論うつもりはない

なら将来性は買うが、まだ未完の大器なのか? と問われれば、まだまだ伸び代が見える上にセンスがずば抜けている! と筆者は答える。
何よりも音色の使い方が出色。
どれもこれも耳を惹く気持ち良さ。ちょっとダサかったり荒かったりしても、それが美味くスパイスとなるくらいに。
しかも、こじんまりと収まらない。弾ける時はM-03やM-10のように音割れも辞さず、がつんとかます。閉める/締めるべき時はM-11のようにそっとカーテンを下ろす。
この振り幅の大きさが、本作をドラマチックに感じさせる要因か。

そんな気持ち良い音を知り尽くしているかのような小癪な用い方をする本作のプロデューサーは、メンバーのリチャードの方。地元シドニーのスタジオ二ヶ所で録ったようだ。
ではこの気持ち良い音どもを巧く編んでテクスチャー化したのは――つまり本作のミキサーは、やはり〝マッケンさん〟ことジョン・マッケンタイア。もちろん作業は例のトコ
正になるようにしてなった編成。

M-01 October
M-02 In The Blood
M-03 O Soundtrack My Heart
M-04 Fool In Rain
M-05 Sing, You Sinners
M-06 Sweet Memory
M-07 Love Like I
M-08 Didn't I Furious
M-09 Epsilon
M-10 Nothing Hurts Machine
M-11 My Heart Like Marching Band
M-12 Epsilon Beta (Bonus Track For Japan)
M-13 Blood Red Rise Dawn  (Bonus Track For Japan)


2012年9月24日月曜日

TO ROCOCO ROT 「Speculation」


ドイツのベルリン出身、ロナルドとロベルトのリポック兄弟とシュテファン・シュナイダーからなるミニマルユニット、単独名義としては六枚目。2010年作。
お気付きの通り、ユニット名は回文。

生音の質感をきちっと残しつつ、卓加工で折り目正しく表現するのが彼ら式ミニマル術。それを「同じコトを一生掘り下げても飽きない連中」なドイツ人が演ったとなると……嗚呼、反復魔境音楽・クラウトロックのにほひが……!
でも! それほど難解ではなかったりする。むしろ上っ面のみを攫えば案外平易なテクスチャをしているモンですって。
気を衒わず、すっとんすっとんとシンプルなビート。信号機のように規則的な鳴りでトラックを案内するベースライン。シンセやオルガンやピアノやギターなどを音色として加工し、使い目を絞り、絶妙な配置で刷り込んでくる上モノ――
シンプルだからこそ頭の中をからっぽにして、ほけーっと聴いていられる音楽廃人製造音楽

ただし今回! 上記のような音世界から更にワンステップ。

シュナイダーが鳴らすベースのフレーズがやけに立っている。さしづめ、人ごみから紅白ストライプのメガネ野郎を探すくらい。
「いつもより僅かに」とか、「聴き続ければいつの間にやら」などという意味ではない。着目点がある、というコトが重要。コレに釣られて聴けば、より頭を使わず音のありのままを肌で感じやすくなる寸法だ。
ほら、もうコレ、聴き手の判断力を奪う魔の音楽でしょうよ!
あな恐ろしや。

これぞ音楽魔境、クラウトロック末裔の呪術よ。
ちなみに本作はあのFAUSTのメンバー、ハンス・ヨアキム・イルムラーが所有するFaust Studiosで録音され、M-11ではイルムラーがオルガンでゲスト参加している。
なるほど。

M-01 Away
M-02 Seele
M-03 Horses
M-04 Forwardness
M-05 No Way To Prepare
M-06 Working Against Time
M-07 Place It
M-08 Ship
M-09 Bells
M-10 Fridays


2012年9月22日土曜日

CLARK 「Fantasm Planes」


本チャンのアルバムと同年の2012年、たった五ヶ月のスパンで切られたミニアルバム。
ミニアルバムゆえに、ランタイムが日本盤のみのボートラを含めても20分弱しかないのであしからず。もともと大曲志向のない人なのに、「短い」とか文句言われてもねー。
ジャケは引き続きジュリアン・ハウス。

まずは小気味の良いフルートの音色から始まる、新曲のM-01がエグい。
上モノは前作通りの妖しさなのだが、ビートがそれ以上。
拍を三で打ったり、四でブレイクビーツを刻んでみたり。普通に四でキックを打ったかと思えば、するりと三に移行させたり。上モノの音色の組み合わせの変化に応じてその彩を巧みに〝破綻もなく破綻させていく〟躁鬱症仕立て。
M-02は前作冒頭のアコギの調べと、マルティナ・トプリー・バードの声を流用したトラック。コレもビート感覚がイカレてる。まるでけんけんぱをしているような……。
そのマルティナ姐さんの歌声をフィーチャーした、前作〝Secret〟の再構築曲M-05では、姐さんの歌声のピッチを下げ、低く、より妖しく生成する一方、安定しないビートと薄ら怖い音色使いでえげつないトラックに変貌している。

ココらで聴き手はそろそろ気付くはず。
前作唯一の難癖である〝BOARDS OF CANADA風味〟がもはや、ない。
前作、モロにBOC色が出てしまったアンビエントトラックでも、M-04に至っては不穏な音色を淡く、幾重にも重ね塗りして、CLARK色とまではいかないが全く出所が判明出来ない代物に仕上げてしまっている。
M-06も(ボートラのM-07も)アンビエントなのだが、こればかりはどうしようもないBOCテイストに、ちょっと一捻りを加えて着地点を異にしている。
特に、今回も日本盤ではアンビエントを連ねる、尻すぼみになりかねん暴挙をまたしでかしているが、「ローズマリーの赤ちゃん」を思わせる、無邪気なまでの強烈な妖しさから余韻は最悪。嫌な中毒性を抱かせて締める。

フルアルバムの後にリリースして内容を補完する音源は数あれど、ココまで力を入れて手を加えたケースもそうそうあるまい。
ぜひぜひ「Iradelphic」とセットに。単体では意味を成さないとは言わないが、どうせ次では全く違うアプローチを取りやがるはずだし、両方聴き込んでこそのモノだと思う。

M-01 Fantasm Planes
M-02 Henderson Swooping
M-03 Com Re-Touch / Pocket For Jack
M-04 Brigitte
M-05 Secret Slow Show
M-06 Dove In Flames
M-07 Russian Dust Hoarder (Bonus Track For Japan)


2012年9月18日火曜日

RIOW ARAI 「Number Nine」


タイトル通り、九作目。2009年作品。

思えばココまでよく洗練されたなあ、というのが第一印象。
構成はいつものアタックの強いボトムにワンショットの上モノメイン。ところどころビットレートの低い音色を用いているが、ただ単にその音が欲しいだけで、低スペックに喘ぎながら創っている節もない。ココら辺のぶれなさは流石だ。
ただ、以前よりも音を左右にパンしまくるような卓加工頻度が減った。初期、「訳が分からない」と揶揄された特有のブロークン過ぎるビートがややマイルドになった。

それらよりも、メロディの使い方がいつの間にか、平然と、達者になったのが大きい。

Jazzirafiなるエレガントな歌唱の女性シンガーを起用したM-05と、そのほぼ対になるM-10などその最たる例。上モノループのまばゆさに加え、それとビートの間に潜り込ませたさり気なく甘いベースラインなど、無骨なトラックを好んで組んでいた頃とは聴き違えんばかりだ。
恒例のメロディアストラックで締めるM-11も、お約束に堕せず、違和感も抱かせない。
その一方で、卓でDJバトルをするかのようなM-04など以前の彼らしいトラックなのだが、これが何と九分越えの長尺曲! となると話が違ってくる。しかも、それを頭か終いの背景色を揺らがせて時間稼ぎするようなせこい真似などせず、いつでも締められる雰囲気を醸し出しておいて、真っ向からぐいぐい乗り切ってしまうのだから恐れ入る。
また、ケーハクなフロウが持ち味(!?)のラッパー、ノーキャンドゥー参加のM-03とM-08にも、こちらから迎え撃てるほどの余裕を感じる。

要は音に自信に満ち溢れている。

一枚一枚、音源を出すことでデータを蓄積し、次へ次へと反映させてきた、超が付くほどの堅実派である彼も、そろそろメインストリームに殴り込みをかける時期なのかなあ、自覚し始めたのかなあ、なんて思ったりもした。
だがそれが良いのかどうかも分からない。このままデータを取り続けて向かう先に何があるのかも分からない。
サイコロを振れば振るほど、出目が均一化されていくような状況なのかなあ、なんて偉そうなコトを考えてみたりもした。

M-01 Intro.
M-02 Status
M-03 Meet Me In Ebisu (featuring Nocando)
M-04 World Wide Wave
M-05 Electricity (featuring Jazziraffi)
M-06 Sweet Tweet
M-07 Funkenstein
M-08 Open Eyed Dreams (featuring Nocando)
M-09 Social Pressure
M-10 Remember Me (featuring Jazziraffi)
M-11 Moonlight


2012年9月16日日曜日

YUKO 「For Times When Ears Are Sore」


ベルギー中部・ヘント出身の四人組、2008年デビュー作。
ジャケのアートワークはデイヴィッド・フォルドヴァリ。この他にもコレとかコレとか手掛けている、イカした絵師だ。

音世界を一口で表わせば『エモコアを通過したポストロック』。
凄腕の女性ドラマー、と触れ込みのカレン・ウィリアムスをやたらとフィーチャーする販促の叩き文が引っ掛からなくもないが、このバンドを支えているのは明らかに、全作曲を手掛け、ヴォーカル、ギター、バンジョーなどの美味しいパートを独占しているクリストフ・デニス(Kristof Deneijs)であろう。
自身の、部屋の隅っこで体育座りをして呟いているようなめそめそヴォイスを軸に、各楽器の音の隙間を利用して丁寧に紡ぎ上げる手法。多彩な装飾音のさり気ない噛ませ方に高いセンスを感じる。
その細工はドラムのカレン嬢が担っている部分も大きく、スネアの細かいフィルイン、裏打ちの多用、シンバルパターンの引き出しの多さなど、なかなかどうして巧みな撥捌きを披露している。ビート感覚からしてジャズ畑のコやも知れない。

ただし! エモコアという類型が跋扈するシーンより派生した連中ゆえ、加えてまだデビュー作ゆえ、借り物っぽい部分もなきにしもあらず。
お里が知れるイントロの立ち上げ方、エモコアっぽさ全開の逆切れ的激情パート、MOGWAI様々の轟音使いなど、苦々しい笑みがこぼれてくる部分は……エモコアユーザーには受けるかもしれないが、そこに保険を作っておくべきではなかろう、と筆者はぴしゃり。

とはいえリリース枚数が解決してくれる問題だと思うので、単なる難癖に留めておこう。
出来自体、初作品としてはそつな(く良)いので大化けはしなさそうだが、日本人にとって聴き馴染みのあるバンド名だし、覚えておきたいところ。
もしかして後、音響職人のような成長を遂げているやも知れないよ!

M-01 For Times When Ears Are Sore
M-02 There’s A Light
M-03 No Trees Up Here
M-04 I Don't Know What I Want But I Do Know It Won't Come From You
M-05 Feuchtt cher
M-06 No One Here To Hug
M-07 A Room For Two
M-08 Nurse The Child Within Me
M-09 Don't Drag Dogs Into Bed, They Carry Diseases
M-10 Hurry, Back To The Meal Mobile
M-11 She Thought She Could Make Us Come


2012年9月8日土曜日

LEGO FEET 「Ska001cd」


あの辛辣なる音楽賢者AUTECHREの変名と言うか、前名義と言うか……1991年発表、ロブ・ブラウン&ショーン・ブースによるキャリア初のフル音源が、2011年(末)に二十周年を記念して驚きのリイシュー。
無論、おマンチェの謎ニカレーベル・Skam Recordsより。タイトル通り、Skamにとっても記念すべき初リリース作品であった。

当時レコードで発売されたオリジナルの収録曲はM-01とM-02。それぞれA面とB面だった、という訳だ。M-03とM-04は当時の未発表音源とのこと。
それを踏まえれば、この四篇は長尺トラックに非ず、というコトが分かるはず。いちいちトラック分割もせず、そのままCD化しました、と言わんばかり怠惰さ
まあ元々が曲名とかアルバムタイトルとかどーでもいい、と考えているニカ気質剥き出しの彼ら。後日1997年、選り抜いてレーベルコンピ「Skampler」で蔵出しされた〝Leaves On The Line〟〝Keyop〟〝Northwest Water〟以外のトラックは、インターリュードを含めて名もなきトラック扱いなのも怠惰なのかいい加減なのか

そのアレさは内容にまで表れる。
ヒップホップの始祖鳥であるエレクトロちっくなのもあり。同じ枝葉のアシッドハウスちっくなのもあり。今で言うチップチューンな味わいもあり。
それらを一口で言えば「Skam特有の安っぽさがもう浮き彫りになっている」。
もう一言加えれば「雑多」。
更にもう一言加えれば「青い」。

初作品にありがちな「とりあえず俺たちのやりたいコトを、この皿に余さず叩き込んでやるぜっ!」と、拳を固めていきってみせたようなアルバム。
サンプラー扱いはこなれたもので、既に実力の片鱗は見せている。とは言えまだ発展途上なので、後に獲得する強烈な個性や不動の表現軸など望むべくもない。しかも時代性も相俟って、今となってはビミョーにダサい。
俗に「枕に顔を埋めて足をばたばたさせる」盤。

だが、それが良い。(ニコッ)

ほんのたまに、サンプラーを用いていた頃の初期AUTECHREっぽい音色使いが顔を覗かせ、にやりとさせられたり。
トラック群が比較的連動しているので、DJミックスのような味わいがあったり。
それよりも何よりも! レイヴ禁止法に敢然と立ち向かったり、現在の音楽性からでは窺い知れない「ヒップホップに多大な影響を受けた」という発言を裏付ける重要な資料に、本作が位置しているコトを忘れてはならない。
敬意と愛、だよなあ。

普段はシニカルでクールなAUTECHRE、熱き血潮を見せ付ける、若き頃の肖像。

M-01 Parts 1
M-02 Parts 2
M-03 Parts 3
M-04 Parts 4