2012年9月28日金曜日

ELECTRIC WIZARD 「Come My Fanatics....」


出ました大英帝国大麻導師! イングランド南部・ドーセット出身の(当時)三人組スラッジコアバンド、1996年作の二枚目。
リーダーのジャス・オーボーン(Gt.Vo)に、後に袂を別つBaとDs、というシンプル編成。
なお、CRIPPLED BLACK PHOENIXのジャスティン・グリーヴス(Ds)が加入し、さっさと脱退するのは本作の次の次のそのまた次(2004年)のアルバム。

当アルバムは〝世界一重いアルバム〟と評されて久しい。
極度のダウンチューニングからひたすらリフを引きずり、聴き手の心に負の感情を刻印するそのサウンドは、ヘヴィ音楽に耐性のない方は避けて通った方が幸せかと思われる。
ただ、このバンドの本質がヘヴィさだけではないとしたらどうする?
むしろ筆者は、レーベルオーナーがあきれてしまうほどマリファナ好きの快楽主義者が目指す至高のトリップミュージック=サイケバンドだと思うのだが。

曲が概ね長いとか、オーボーンがファズを使いたがるとか、その彼の歌唱が如何にもなヘタウマ的だらしなさとか、スピリチュアルでスペイシーなインスト・M-04が明らかにソレモンの曲だとか、定型的なサイケ色は枝葉でしかない。
本作は2006年再発時にリマスターを施しているのだが、その改変ぶりがあまりにも露骨にトバし目的なのだ。
M-05を聴いて欲しい。
この筋特有のもこもこした音像の中、オーボーンとベーシストの超ド級重低音リフと、ドラムのモタってるんだか踏み止まってるんだか分からないべしゃっとしたビートへ、水泡が弾けるような電子ループを噛ませたこの曲。旧盤ではほぼ埋もれてしまっているのだが、リマスター盤ではそのループの音量が作為的に大きくなっている。それはもう、バンドの演奏を妨げん勢いで。
――明らかにこの音を耳で追え、と言わんばかりに。
結果、ずるずる反復演奏とのマッチアップで、聴き手の視点がどんどん定まらなくなってくる。こそばい鼓膜が、次第に快楽(けらく)へと蝕まれていくはずだ。

音による圧殺を目的としがちなこの界隈では思ったより居ない、音による快楽を推進するバンドとしてあえて、当ブログでミスマッチな彼らを扱った訳だ。

最後にもう一度。「ヘヴィ耐性のない方は興味本位で触れるべからず」
ただ、耐性というのはあくまで己が勝手に定めた感度の限界値であって、本来身体がどこまで耐え得るか、本人さえも知る由がないのかもよ。へへへへ……。

M-01 Return Trip
M-02 Wizard In Black
M-03 Doom Mantia
M-04 Ivixor B / Phase Inducer
M-05 Son Of Nothing
M-06 Solarian 13
M-07 Demon Lung (Bonus Track)
M-08 Return To The Son Of Nothing (Bonus Track)


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