マンチェスターより参上のトリップホップムーヴメント後発隊、1999年の二枚目。
例によって女性シンガー:ルイーズ・ローズと、男性トラックメイカー:アンドリュー・バーロウのデュオ編成。
すぐ〝男女トリップホップデュオ〟と一括りにされ、勝手に没個性のレッテルを貼られてしまいそうなのだが、やはり彼らも個性的。
バーロウ(Barlow)は、ビートは素直に刻まないわ、刺々しい加工を施した音色をがんがん盛り込むわで、聴き手の耳に引っ掛けるためなら手段を選ばないアクの強い手法を身上としている。おそらくヒップホップではなくテクノ畑の人かも知れない。
一方のローズ(Rhodes)は、やや線が細くて平たい独特の声質を楽器のように扱える、なかなかどうして実力派のシンガーである。
セオリーならバーロウ主導の、上から目線でそつないシンガーに歌を乗せさせてやるか。ローズ主導の、アクのないトラックで自由に〝最強の音色〟を誇示する歌モノ路線にするか。間を取ればちぐはぐになり、お互いの持ち味が相殺されてしまう。
だが彼らは、エゴの強い二人の間が取れてしまった稀有なユニットである。
忙しないボトムラインと横から強引に割り込んで来る装飾音に対し、気負うくらい過剰に意識はしつつも、あえて悠然と道のド真ん中を闊歩する姿勢を崩さない歌唱。
――コレは共闘ではなく、競争だ。
現に彼らはアルバム作業に入るたび、激しく言い争いを繰り広げていたそうだ。まあそんな光景はどんなグループにもある訳だが、音からそれが伝わる作品もそうそうない。
それだけ〝強敵〟と書いて〝とも〟と呼ばせる良い関係が築けているのだろう。
なお、本作からウッドベースやドラムやトランペットなどの生楽器どころか、オーケストラまで導入。作風が幅広くなった――と言うよりも、ローズへの手管を変えたバーロウからの圧力とも受け取れて、傍から聴く我々にとっては非常に楽しい。
中でも似非ジャジーなトラックを、サビのヘンテコスキャット風フレーズが丸呑みしてしまうM-03は白眉。
M-01 Soft Mistake
M-02 Little Things
M-03 B Line
M-04 (Untitled)
M-05 All In Your Hands
M-06 Less Than Two
M-07 Bonfire
M-08 Ear Parcel
M-09 Softly
M-10 Here
M-11 Fly
M-12 Alien
M-13 Five
M-14 Lullaby
日本盤は:
M-15 B-Line (Lamb Lounge Mix)
M-16 Gorecki (Global Communication Remix)
が追加されている。
M-16は前作収録曲のリミックスで、もちろんグロコミの手によるもの。それよりもM-15は更にジャジーに、更にヴォーカルもトラックもエグくなっているので驚喜しよう!
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