2013年2月14日木曜日

BIBIO 「Mind Bokeh」


お茶目な好漢、ステファン・ジェイムズ・ウィルキンソンの2011年、五枚目。

Warp二作目のオリジナルアルバムは、前作よりも更にデジデジしく、間曲扱いのM-09と恒例の締めインストM-12(とボートラM-13)以外は全て歌モノだ。
だが〝デジデジしさ〟はあくまで〝音色〟という名のパーツ。十七種もの楽器を自ら演奏した〝音色〟も等価で卓編集していく手法は、何らMush時代と変わっていない。しかもアートワークまで自身が手掛けているのだから、俗に言う〝Everything By Stephen James Wilkinson〟状態。
一方で曲調は、米男性R&Bシンガーに提供したいくらいお洒落な(のに、ところどころクセのある加工を忍ばせた)M-03から、小気味良いエレクトリックギターをフィーチャーしたデジタル風味ロック曲のM-06まで、冒険したいのにさせてくれなかった(としか思えない)Mush期の鬱憤を晴らすかのような音楽性の拡散ぶり。

やはりこの男も〝一所に納まりたがらない〟ニカ気質だ。

ただし、好きに演らせれば必ず面白いモノを創ってきてくれる人だけど、誰かさんと違って自分の本分を分かっている人なので、毎度毎度作風をがらりと変貌させるような暴挙は起こさないはず
こちらは何の心配もせず、雛鳥のように口を大きく開けて彼のリリースを待つだけで毎回美味しい思いが出来る安定株だ。
ならば優等生なのかと思いきや、ビートを作為的に大モタりさせたり、なぜかスクラッチを模した音をトライアングルで出そうとしたり、子供のように牛乳瓶やワイングラスや酒瓶をちんちん鳴らしたり、オーソドックスな洋風楽器ばかり用いている中でビリンバウ(弓に瓢箪つけてびんびん弦を弾くブラジルの楽器)だけぽつんと導入してたりと、落ち着きがない。
彼の人柄が偲ばれる。

本作はイングランド中部・ウルヴァーハンプトンのテラスハウスにて宅録された。
インナーに『(うるさくして)近隣住民のみなさん、すまんな』とクレジットする彼は本当に憎めない奴だ。
(常に良い作品を提供してくれれば)ええんやで。

M-01 Excuses
M-02 Pretentious
M-03 Anything New
M-04 Wake Up!
M-05 Light Seep
M-06 Take Off Your Shirt
M-07 Artists' Valley
M-08 K Is For Kelson
M-09 Mind Bokeh
M-10 More Excuses
M-11 Feminine Eye
M-12 Saint Christopher
M-13 Vertical Helical Stan (Bonus Track For Japan)


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