J・スウィンスコー率いる仮想映画音楽ジャズ楽団、2007年作三枚目。
今回の〝スウィンスコー脳内劇場〟はパリを舞台に、『愛と喪失』をテーマに、ゆったり、しっとり、さめざめと進んでいく歌モノ路線だ。
そのゲストシンガーは、中性的な声色のカナダ人男性ソロシンガー:パトリック・ワトソン、〝ヴォイス・オブ・シネオケ〟のフォンテラ・バス婆様、当時LAMB活動休止中であったルイーズ・ローズ、の三名。
それぞれオープニング、クライマックス、エンドロールを担っている――と寂寥感に満ちたジャケットを眺め、もしくは目を閉じ、肩の力を抜いた状態で聴き手各々の脳内映写機を回しつつ感じ取って欲しい。
本作で筆者的に特筆すべき活躍をした三名を。
まずはフィル・フランス。シネオケ最初期から居るウッドベース弾きで、前作あたりから曲創りや制作に多大な貢献を齎し始めたスウィンスコーの片腕的存在である。さしづめ、スウィンスコーが指揮者だとすれば、フランスはオケマスか。
続いてM-02、03、09でコーラスを務めるジンバブエ系英国女性シンガーのエスカ・ムトゥンウェジ。〝Backing Vocals Arranged〟のクレジット通り、自らの感性に基づいて出すことを許されたそのストイックな声色は、参加曲に良きアクセントを与えていると思う。
最後に二児の母:ルイーズ・ローズ。LAMBでは肩肘を張らないと存在感が埋もれてしまうがゆえの気負いを歌声に感じたが、ソロ活動や数多の客演を経て力の抜きどころを知ったのか、非常にリラックスして一音色に徹している。その結論はやはり『色んな人に呼ばれるだけはあるシンガー』というコト。アルバムの締めに相応しい歌声だ。
シネオケ、三枚目にして円熟の味わい。是非、大人の女性に聴き浸っていただきたい。
M-01 To Build A Home (feat. Patrick Watson)
M-02 Familiar Ground (feat. Fontella Bass)
M-03 Child Song
M-04 Music Box (feat. Patrick Watson / Lou Rhodes)
M-05 Prelude
M-06 As The Stars Fall
M-07 Into You
M-08 Ma Fleur
M-09 Breathe (feat. Fontella Bass)
M-10 That Home (feat. Patrick Watson)
M-11 Time & Space (feat. Lou Rhodes)
M-12 Colours (Bonus Tracks For Japan)
M-13 Flowers (Bonus Tracks For Japan)
日本盤のみのボートラ二曲は、せっかく良い余韻で閉まるM-11を無視してまで続けるほどでもないような気がする上に、M-13の締め方ではあまりに唐突過ぎて彼らの特長であるストーリー性が損なわれてしまう気も。
ただ、彼ららしさのある曲なので、目くじらを立てるほどでもない気も。
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