2013年6月10日月曜日

BIBIO 「Silver Wilkinson」


ステファン・ウィルキンソン本人によるデザインの、色取り取りのビビオ(毛針の一種)が舞う秀麗ジャケが印象的な、2013年作の六枚目。

相変わらず〝Everything By Stephen James Wilkinson〟状態。
だが、M-01から聴き手の首を傾げさせる。三枚目まで所属していたMush Records時代の〝追憶的なフォークサウンド〟の音像が飛び出して来るからだ。
『いやいや、のっけだからイントロ扱いでしょ。良くある手法だよねー』と高を括っていたら、続くM-02も追憶フォーク。『今更、あの方法論で演り残したコトなどないでしょうに』なんて思っていると、インターリュードっぽい流れを挿み、やはりとろーんと始まるM-04の後半でようやく、Warp期に導入された古臭いデジタル音色が。
そこから一気に耳慣れたWarp路線へ。
続く、晴れの日に庭で創ったM-05など典型の曲。M-07はCOMMODORES〝Just To Be Close To You〟をサンプリングし、地味な出だしながらもヴォーカルチョップしまくり始めてからが本番のブレイクビーツチューン。M-10は彼を発掘したBOARDS OF CANADA最初期の影響が強い、シンセが幅を利かすインストナンバー。

序盤のMushMushした雰囲気は何だったのか。

Warp移籍以降、大手インディーらしい環境の良さから、もうレアでロウな音質で録る必要性がなくなったと思っていた、筆者は。
ややや、そこで今回。ウィルキンソンは自宅にあるレンガ造りの物置へ機材を持ち込み、風雨吹き荒ぶ中で数曲の録音を敢行したという。アルバムの随所で、雨音という自然の齎すグリッチが聴こえてくる仕掛けだ。
あえて制限のある環境で録られたこの音像、強烈に追憶を――いや、Mush期を呼び起こさせる。同時に良好な音質のWarp期っぽい曲と、上手く表裏一体になっている。
コレは〝原点回帰〟などではない。Mush期とWarp期の折衷策だ。

アルバムはMush路線なアコギの弾き語りで(日本盤はそれと連動させた、幽玄なアカペラの小品で)優しくそっと閉じる。
意図さえ分かれば、もう安定のBIBIO謹製レトロフォークニカ。ほっとするね。

M-01 The First Daffodils
M-02 Dye The Water Green
M-03 Wulf
M-04 Mirroring All
M-05 A Tout A L'heure
M-06 Sycamore Silhouetting
M-07 You
M-08 Raincoat
M-09 Look At Orion
M-10 Business Park
M-11 You Won't Remember
M-12 But I Wanted You (Bonus Track For Japan)



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