2013年6月8日土曜日

BOWS 「Cassidy」


友人のMOGWAIが羨む才の持ち主、ミュージシャン兼作家兼詩人のルーク・サザーランドが、デンマークの女性シンガー:シーネ・ホイップ・ヴィレ・ヨーゲンセンと組んだデュオ、2001年作の二枚目。
知る人ぞ知る名インディーレーベル、Too Pureより。

基本、儚げで一本調子なヨーゲンセンや、例の喘ぐようなサザーランドの歌を立てた創り。曲によっては片方だけだったり、デュエットだったり、ゲストシンガーを据えたり
一方のサウンドプロダクションは、これがまた曲者。
アタックの強いブレイクビーツを敷いたアブストラクトっぽいトラックもある。煌びやかな上モノ使いでエレクトロニカを意識しているトラックもある。サザーランドお得意のヴァイオリンに、ギター、ピアノ、ベース、ドラムで(ゲスト奏者を迎えるケースもあるが、サザーランドはマルチプレイヤーでもある)ポストロックっぽいフレーズを奏でる曲もある。
このボーダレスな感覚、如何にも作家でもあり詩人でもあり音楽家でもある多才な者が、しがらみなく創ったような印象を受ける。

専業ミュージシャンなら散漫にならぬよう、いずれかの彩をあえて強めるだろう。
だが本作はその三点を均等なバランスで保ち、かつ統一感もある、夢見心地な出来なのだ。秀才、あな恐るべし。
その要因としては、曲毎にジャンルを決め打ちしてとっ散らかすのではなく、この曲は煌びやかな上モノにブレイクビーツ、この曲は生演奏にブレイクビーツ、この曲は生演奏に煌びやかな卓加工、と互いの要素を複合させて堂々と並べた創りにある。
これ、サザーランド本人はおそらく意識して創っていないと思われる。十中八九、『好きだからこうなった』と答えるだろう。

どっぷり浸かっている者では考え付かない、俯瞰出来る立場から己の好き勝手に演ったセンスの塊のような作品。
しかも副業者にありがちな奇を衒った感や、素人臭さが一切ない。きちんと基本を踏まえている上に、この高次元なプロダクションが自力で出来ない(トラック制作はもちろん、プロデュースもエンジニアもミックスもサザーランドがほぼ担当)玄人は掃いて捨てるほど居る。
衝撃的な作風ではないが、地味に凄いよ。

M-01 Luftsang
M-02 Cuban Welterweight Rumbles
M-03 Man Fat
M-04 Ali 4 Onassis
M-05 Uniroyal
M-06 B Boy Blunt
M-07 Wonderland
M-08 DJ
M-09 Blue Steeples
M-10 Hey Vegas
M-11 Sun Electric / Ton Ten All The Way Home

日本盤のみ、同年発表のシングル「Pink Puppet」よりタイトル曲を除いたリミックス四種が追加収録されている。
その内容は何と、サザーランドが執筆した小説の一場面を自身で朗読した代物。それをリミックスさせる感性も凄いが、その面子がマイク・パラディナス(μ-ZIQ兼Planet Muレーベルオーナー)やロブ・スウィフト(米著名ターンテーブリスト)らと、豪華なのも凄い。



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