テクノクリエイター、マーク・プリチャードとトム・ミドルトンによる、1994年作。アンビエントテクノの名盤として名高い。
ミドルトンがあのリチャDとの共作経験もあるのは周知の事実。その点を踏まえると、本作のこの発表年はとても意味深長に感じる。
その片側は次回に譲るとして、さてグロコミ。本作は彼ら唯一のオリジナル作品である。
元々が現場――つまりDJ気質の人々で、自らクリエイトせずとも周囲に良質な音楽がごろごろ転がっているのなら、それに敬意を払って使わせていただきましょうよ、というのが彼らの活動本意だろう。
そういった人々はオリジナルアルバムを創ると大抵、如何にもし難い出来となって聴き手に深い嘆息をさせる。
聴く頭と創る頭は全く違うことを断言してくれる。
ですがコレですよ、グロコミは!
基本はノンビート。音色使いの古めかしさは仕方がない。そんな些細な部分など、時代性と思って許容してもらわないと先に進めない。アルバム/曲タイトルがラン/トラックタイムという抽象的部分もニカならではなのだから、気にしないで欲しい。
気にするべき音楽ではないのだから。
浮遊感のあるシンセの長音は、まごうことなく現世の音。この世に息吹きする生命の音。それを象徴しているのが印象深い主音と、それを盛り立てる背景音の美しさ。それを丁寧に編み込むテクスチャの妙。
ベタな法則ではあるが、これこそが音楽の基本。こういった作品をしれっと出せるのも、実力者たる所以である。
この普遍的な創りならば、『世界規模の伝達。音の媒体を通して伝えられた、感動的な表現』(M-06より)と言い切れる力を有している。(声の響きが宗教めいて聴こえる点は気にしない)
最後に、アンビエントとは〝聴いて感じる〟音楽だと思っている。
終わりそうで終わらず、続きそうかと思えば終わる兆しをみせ、でもやっぱり続いて、やがて消え行くように締めるM-10が最たるモノだ。
だから(全ての音楽に対しても言えるコトだが)クソ真面目に正座して聴けなどとは言わない。BGMとして聴き流しても一向に構わないと思う。
ただ、聴き続けて鬱陶しく感じるならアンビエント音楽として失格だし、眠くなるのならそれはリラックスしている証拠だから良しとすべき。
本作を聴いて前者は信じ難いし、後者なら……それはカラダが欲しがってる証拠だよ、うへへへ……。
M-01 4:02
M-02 14:31
M-03 9:25
M-04 9:39
M-05 7:39
M-06 0:54
M-07 8:07
M-08 5:23
M-09 4:14
M-10 12:18
M-07はTANGERINE DREAM〝Love On A Real Train〟のカヴァー。二倍に増幅されている分、リミックスに近い改変ぶり。
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