2012年1月28日土曜日
SQUAREPUSHER 「Music Is Rotted One Note」
みんなだいすき! いろいろ残念系エレクトロニカアーティスト、トム・ジェンキンソンによる1998年作の三枚目。
大問題作にして傑作。
親分筋に当たる(単なる友人なんだけど)リチャDよろしく『Everything By Squarepusher』とかインナーにクレジットしちゃう痛い子なトムが、本当にEverythingしちゃったアルバム。
トムがああ見えて凄腕なベーシストなのはご承知の通り。それに飽き足らず、卓加工はおろか、キーボードもドラムも演っちゃった。
つまり打ち込み捨てちゃった! おまけにエレクトロニカから離れちゃった。『ジャコパスが何だ、マイルスがどうした! 俺が曲を作り! 俺が演り! 俺が好きなように加工した、俺のジャズだ!』と、外部の意見シャットアウトして創っちゃった。
他人の手を借りたのはマスタリング(原盤製作係)と装丁くらい。
誰か止めろよ、このコントロールフリークを。
いや、誰も止めなくて良かった! この時のトムの創造力はキレにキレまくっていた。
『殻に籠もっている』と言われようが構わない。殻に籠もることで己を見つめ直し、真に自分が鳴らしたい音を導き出せたのだ。
お陰で本作はトム作品にあるまじき、焦点の絞れた作品になっている。後に『全ての音楽要素を極限まで使い切ってやる』と吼えた同一人物とは思えないくらい。
しかも、いつもクールを装っている(トコが可愛い)トムの目が血走って見えるくらい熱いアルバムだ。音像は比較的冷ややかなのに。
各音から発せられる空気の張り詰め方が尋常ではない。忙しなく荒れ狂うビートは、彼がクレイジーさを求めてドリルンベースを導入したコトを窺わせる。彼の得手であるベースも、いつも以上にぐいぐい曲を操縦している。このテンションこそが熱さの源だ。
その一方で、間曲感覚で挟むドローンアンビエントが上手くチルアウトの役目を果たしている。もちろん押しだけではない、引きにあたるマイルドな曲調もあり、打ち込みと見紛わんばかりの構成力で唸らせる。
きちんと第三の目で俯瞰されている。トムは至って平静だ。
ただし、この精神が苛まれるヒキコモリ的作風を続けられるほどトムのハートは強くない。『難解過ぎる!』とか『ねー、ドリルンはー?』とかいう外部(特にファン)の意見をあっさり取り入れ、再び打ち込みへと舞い戻って来るのであった。
打ち込みだろうが生音だろうが、好き勝手に演れば良いのにねーェ。あ、演ってるか! 演ってるからあんなんなんだね!
M-01 Chunk-S
M-02 Don't Go Plastic
M-03 Dust Switch
M-04 Curve 1
M-05 137 (Rinse)
M-06 Parallelogram Bin
M-07 Circular Flexing
M-08 Ill Descent
M-09 My Sound
M-10 Drunken Style
M-11 Theme From Vertical Hold
M-12 Ruin
M-13 Shin Triad
M-14 Step 1
M-15 Last Ap Roach
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