毎度お馴染み日本のビート・プロフェッサーとSHADOW HUNTAZのリーダー、奇跡の邂逅。2005年作品。
2005年はRIOW ARAIにとって攻勢の年だったように思える。
クリックハウスを能くするNAO TOKUIとのコラボを皮切りに、オーストリアの名門・Megoが輩出した日本の音響歌姫・ツジコノリコとのRATN名義、そして本作である。
彼が前作で自らの音楽的土台を完全に固めた、もう揺るぎないと確信してのタッグ戦線進出だと、筆者は勝手に推測している。
今まで機会のなかった、1+1を2ではなく10倍の200にする挑戦の始まりだ。
まずは、なぜかマズレク大将作品の日本盤ライナーで書かれていた、本作についてのおかしなエピソードを紹介。
この太平洋を隔てた競演は、何とNONGENETICが、RIOW ARAIのHPに載っていたサンプル音源に自らラップを重ねて勝手に送り付けてきたコトから端を発しているらしい。
しかもこの二人、本作発表時点で顔すら合わせていないらしい。コレもう〝邂逅〟ですらない! (現在はどうなんだろう)
なお、レコーディングは東京とハリウッドに分かれて録られた。
そんな二人から出て来た音はやはり、ガチのヒップホップ。
既存のヒップホップフォーマットから外れたトラックに乗りたがるNONGENETICと、自らの音を様式化するべくヒップホップフォーマットに近付いたRIOW ARAIの合体は、皮肉と言うか理に適っていると言うか。
とは言え、ヒップホップという音楽の構造上、タイマンではない。NONGENETICの同僚・DREAMとBREAFFなどを含む総勢六名のラッパーが脇から支える。
また、今でもRIOW ARAIと繋がりのあるワンターンテーブリスト・DJ DUCTの活躍が光る。そのアグレッシヴなスクラッチはトラックに間違いなく活力を与えている。それこそ〝RIOW ARAI + NONGENETIC + DJ DUCT〟名義でも差し支えないくらい扱いが良い。
前作のIntroがココまで発展したM-01。湿ったギターのカッティングループが心地良いM-05。声ネタの不穏さから聴いていてだんだん不安になってくるM-08。へヴィかつファンキーにガンガンアゲていくM-13から、ヒップホップらしく大団円なまったり空気で締めるM-14とまあ、隙皆無で完成度の高いアルバムだが、筆者はふと気付く。
「もっといつものアライさん流ビート学を貫いて、ノンジェネ含む参加メンバーを統べる形になるかと思った」
その実、本作は思ったよりRIOW ARAI色は濃くない。共演盤なのだから当たり前だ。
いつもよりループで構成されているトラックも多い。ラップという点で置いて行く音を立てている以上、同じように点を置いて行くいつものワンショットメインの創りではカブってしまうという配慮かも知れない。
配慮――唯一無二の個性を持ちながら共演者を丸呑みしない賢明さを持つ彼は、音源を出すという研究から得た成果をもれなく脳内へと蓄積している。
ただし、一生結論を見ないのが〝学問〟というものだ。
M-01 Travel The Night
M-02 Mrsmr
M-03 Neo Con
M-04 Betterdays
M-05 Oh Snap
M-06 Kiss
M-07 One Dolla
M-08 Scared
M-09 Parallel Lines
M-10 Stop Lying
M-11 Dolla
M-12 Incredible
M-13 Dead Or Alive
M-14 Change
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