カナダの夫婦スラッジ善哉、2007年作。
本来この作品は2003年に日本のDeserted Factoryレーベルより発表された、エイダン・ベイカーによるソロプロジェクトとしてのNADJAデビューCD-R音源なのだが、コレは相方のリア・バッカレフを加えてリレコーディングとリアレンジを施し、懇意にしている本国・カナダのAlien8 RecordingsよりCD化再リリースしたモノ。
ベイカーはこのような初期音源の焼き鈍し行為を度々行う、マニア泣かせの人なのだ。ただでさえリリースペース早ェのによ……。
まあリレコーディング作品なので、音世界は既に確立後のモノ。
つまりスラッジコア的泥濘リフと、シューゲイザー的拡散フィードバックギターの洪水の下に横たわる鈍重マシーンビート、という音像。
M-01など、彼ら典型の曲。
鈍牛テンポで、泥濘リフに金属質な轟音を絡めてひたすら引き伸ばす。やがて泥濘音を消し飛ばして低音だけを保ち、フィードバックノイズによるサイケデリアへと誘う。
音の密度は異常に高いが、音数自体はそれほどないのも特徴。
このようにNADJAは一つたりとも遊びの音がない。機能的ですらある。
ほとんどバックに埋もれて歌詞が判読出来ない状態のヴォーカルも、従来用いられる曲のアクセント扱いだけに止まらず、野太い咆哮が音圧面に貢献するなど、少ない音数へのテコ入れとしても立派に働いてくれている。
十八分にも渡る最長のM-03の終盤部では、普通なら安易に鳴りっぱなしにして放置するところを、音を揺らがせてアクセントを取り、耳に引っ掛けていく手法などもそう。
ランタイム59分59秒にするためのM-05も、無音で良いのにひっそり微かなM-04のリプリーズにしていたりする生真面目な面もそう。
特に目新しいコトをしている訳ではないが、感覚よりも用の美を徹底して作品を量産する彼ら。このジャンルでは珍しく、職人気質を感じさせる。
そんな彼ら、数多くの音源という名のアーティファクト中、本作に一番愛着を感じているようである。ならば聴き手の我々も避けて通る訳にはいくまい?
M-01 Mutagen
M-02 Stays Demons
M-03 Incubation / Metamorphosis
M-04 Flowers Of Flesh
M-05 (Untitled)
で、リイシュー前の音と聴き比べればもう……泥濘リフですらなかったり、ところどころ創りがダサっちかったりと、なかなかメタルちっくで香ばしい出来だったりする。
エイダンくんにとって過去恥部なのかもねい。そこまで恥かしいモノではないと思うなあ、デビュー作だと考えれば。
きっと原盤を彼の目の前で流すと、枕に突っ伏して足をばたばたさせる様が見られるかもねっ。
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