コルネット奏者、ロブ・マズレク大将がプラジリアンジャズメンと組んだ渾身のプロジェクト二枚目。2008年作品。レーベルは前作同様、Aesthetics(音量注意)。
編成は大将と相方のマウリーシオ・タカラに加えて、二名のパーカッショニストを迎えている。つまり太鼓三段構えだ。さすがはビートを最重要視するラテンの血/地か。
さて……以前書いた通り、本作は相当エグい。マズレク音源中、図抜けたエグさ。他の音源とはダブルスコアつけて聴きづらい。はっきり言ってコレを大将入門盤にして欲しくない。もっと他にも良いのありますよって。
何がエグいのかと言えばその極端な録音状態。
まずハナのM-01から前作同様、フリージャズちっくなポリリズム曲(つか公開リハーサル)で既にこれからかっ飛ばすぞ! という無用な意気を感じる。
明らかに前作から劣化した、もわもわもこもこした音像の中、一本のコルネットを取り囲むように三基の太鼓が好き勝手に鳴らされる訳である。門外漢からすれば、こんなのわけがわからないよ、と匙を投げたくもなるわ、と。
ただこの曲、途中から存在感を顕わにしてきたベースに引きずられて、徐々にメンバー四点のピントが合い出すこの兆しがめちゃめちゃカッコイイ。
以後、ダビーなんだか偶発セッションなんだか悟れない、如何にもし難い音像が繰り広げられる。時にはばっきばきの音割れも辞さない。M-03やM-08など、大将自慢のコルネットの響きが、安っぽいサンプラーによる加工で聴くも無残に溶解している。M-04は各楽器のバランスが一切取れていない、まるでシャツのボタンを掛け違えたまま街を歩くような珍曲。M-06に至っては周波数の合わないラジオを聴いているかのようだ。
で、誰かに「こんなの聴いて面白いの?」と訊かれたら、筆者は満面の笑みを呈してうんっ、と頷くだろう。変なモン聴いて悦に入ってる俺は人とは違うぜ愚民ども! みたいなキモチワルイ上から目線ではなく、純粋に。
演るコト成すコト極端で、この音像に慣れてくると痛快に聴こえるのだ。
四十代半ばに差し掛かった中年太りのオッサンが、ココまで尖がった音を創るのかと。このオッサン、還暦過ぎてもぎらぎらした音楽創ってそうと(おまけに二十代の情婦も抱えてそう)。
マズレク大将というミュージシャンは、象徴的なコルネットの吹き方からして、常に気持ち良い音を念頭に置いて音楽を創ってくれる人だ。
本作もその表現軸は変わっていない。相変わらず一音一音に痺れる。
ただ今回に関しては、その聴かせ方があまりに異常なだけだ、と思おう。
M-01 Final Feliz
M-02 Barulho De Ponteiro 1
M-03 Barulho De Ponteiro 2
M-04 Pulmões
M-05 Entre Um Chão E Outro
M-06 Cosmogonia
M-07 Imã
M-08 Só Por Precaução
0 件のコメント:
コメントを投稿