2012年5月8日火曜日
PORTISHEAD 「Dummy」
1994年発表の記念すべきデビュー盤。
驚くべきことに、初作品ながら既にPORTISHEADならではの個性は確立されている――パサパサしたドンシャリ音像の中、陰鬱なトラックに併せて倦怠感や儚さを籠めて女性シンガーが歌い上げる、という。
上モノがダウナー偏重な作風なので単調さが浮き彫りになるかと思いきや、トラック毎にビートの音色を使い分けることで聴き手の目先を変え〝単調〟ではなく〝モノトーン〟なんだと意識を誘導させることに成功している。(ヒップホップでは定石の方法論なのだけど)
加えて、某ジーンズメーカーのCMでも取り上げられた名曲をアルバムの終い・M-11に据える、度胸たっぷりの曲配置はどうだ。
親分のMASSIVE ATTACK同様、若気の至りのような青臭さが一切ない。下積み時代から構想してきた自らの音世界を余すことなく銀盤に叩き付け、『デビュー作としては~』やら『衝撃の~』やらハイプ臭いフレーズ抜きでベテランどもに一泡吹かせる秀作を、一枚目にして創ってしまったのだ。
お陰で本作は売れた。それこそ〝ブリストルミュージック〟やら〝トリップホップ〟やらと要らぬ枕詞を添えられるくらいに。
素晴らしい出来のアルバムが売れること自体、非常に健全だと思う。だが、彼らが万人に受ける作風なのかと問えば、首を横に振らざるを得ない。
四つ打ちブリブリなトラックをバックに『あげぽよ~☆』とぎゃんぎゃん騒いでいる方が、みんなたのしいに決まっている。
そう言う意味で、彼らの成功はハイプだったのかも知れない。お陰で超人見知りのベス姉さんが急速度に荒んでしまったしね……。
M-01 Mysterons
M-02 Sour Times
M-03 Strangers
M-04 It Could Be Sweet
M-05 Wandering Star
M-06 It's A Fire
M-07 Numb
M-08 Roads
M-09 Pedestal
M-10 Biscuit
M-11 Glory Box
最後に、本作は「To Kill A Dead Man」なる物騒なタイトルのショートフィルムの架空サントラとなっている。実はシネオケの先駆者なのだ。
なお、その映像は前回取り上げたライヴ映像のDVD化に合わせ、追加収録されている。
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