北アイルランドはベルファスト出身の才人による四枚目。2003年作。正確に書けば、ホルムス率いるユニット・THE FREE ASSOCIATIONの作品になる。
他のメンバーは、ほぼ固定メンバーとしてシンガーを男女各一名ずつ据えているのだが、実質的にはホルムスの映画音楽活動でも手を貸しているプロデューサー、スティーヴ・ヒルトンとの共同プロジェクトだろう。
音世界は生音を随所に絡ませた歌モノブレイクビーツ。
ファーストインパクトとは非常に大事で、レゲエディージェイっぽいしわがれた声質のショーン・リヴェロン(男)が、小気味のよいビートと共にアゲまくるM-01に続いて、やさぐれた声質のペトラ・フィリップソン(女)がホルムスお得意のダルでロッキンなトラックとの絶妙なハマり具合を見せるM-02でアルバムの行方は決まったようなものである。
つまり以後、プロダクションに手を抜けば〝ハナの二つで終わってる尻すぼみ盤〟と揶揄される典型のアルバムとなる。
もちろん才人・ホルムスがそんな幼稚な作品を切るはずがない。
アップテンポなのは軽快なビートに乗って男女シンガーが妖しく絡むM-06くらいで、後はやはりホルムスが得意とするラウンジ的な雰囲気の漂う曲調や、ボトムがダークにうねる曲調など、さまざまな趣向を凝らしており、非常に質が高い。生の管楽器の派手な使い方は、さすが映画音楽で馴らしたトラックメイカー、非常にこなれている。
ただ、ホルムス一連のオリジナルアルバムとは、本作はどうも毛色が違う。
そこで浮かび上がるのはヒルトンだ。
サントラ以外のホルムス作品に通底する、ダビーなんだけど奥行きのない、ガレージロックっぽい平べったさなんだけど音の粒は揃っている、独特のプロダクション(一応褒めているつもりなんだけど……)で音像が構成されていないからか。
クリアで、輪郭がはっきりしていて、聴きやすい。ヒルトンはPET SHOP BOYSやS CLUB 7などのポップソングを手掛けた経歴もある人ゆえ、このような分かりやすい音構成になったのかも知れない。
そういう意味で冒頭のホルムスの四枚目ソロ、なんてヒルトンに失礼なのかも知れない。でもホルムスのロッキンな一方でラウンジーな面は相変わらずだし、いっか!
M-01 Don't Rhyme No Mo
M-02 (I Wish I Had A) Wooden Heart (New Mix)
M-03 La Dolce Vita
M-04 Free Ass O-C-8
M-05 Sugarman (Original)
M-06 Everybody Knows
M-07 Paper Underwear
M-08 Pushin' A Broom
M-09 Whistlin' Down the Wind
M-10 Le Baggage