2012年4月26日木曜日

SUNN O))) 「White 2」


シアトル発・漆黒ド重低音魔人デュオの2004年作、五枚目。もちろん自家醸造
本作はタイトル通り「White 1」の続編、という位置付け。ゲストはジョー・プレストン、同郷バンド・JESSAMINEからレックス・リッターとドーン・スミッソン、ハンガリーのブラックメタルバンド・MAYHEMからアッティラ・チハー、が主だったところ。

音世界は前回同様、ギターによる漆黒の密教ドローン。現にM-03など、アッティラ・チハーらによるサンスクリット語での詠唱だ。
不気味で、退廃的で、底知れなく重苦しい。
そんなキャラを踏まえつつも、それにどっぷり浸かっている訳ではなく、どこか俯瞰して己を見通せている点――そこに彼らの本質的凄みがある。

俗に言う〝インテリジェント・モンスター〟だ。

まず相手を完膚なきまでに圧倒するには、まず機先を制さねばならない。そこでまずM-01で、臓腑を抉り取るようなドヘヴィリフを漸進させ、聴き手の心を鷲掴みにする。
よくM-01を称して名曲! と語る者も居るが、それはあまりに盲目的だと思う。
彼らの象徴であるドへヴィリフをフォーマット化して、何の衒いもなく聴き手の鼻っ面に突き付けられるその胆力こそがこの曲のキモだ。それを理解した上でなお名曲だと主張するのなら、その意見は一点の曇りもなく正しい。
M-02に至っては逆にヘヴィリフなど存在しない。静粛の中、不吉な重低音がひっそり継ぎ足される空間で、さまざまな鳴らし方をしたギターがあちこち響く。ランタンの灯りを頼りに鍾乳洞を探検するような、ぴちゃぴちゃひたひた音を立てるギターに背筋を凍らせるよりも、ギターっていろんな音が出せるんだなあと感慨必至。
M-03は先ほども書いたが、正に密教のサバト。召還された悪魔が立ち込める空恐ろしい背景音の中、チハーらの詠唱がホーミーやらディジリドゥに聴こえる。

この通り〝現世とは没交渉〟な音世界。
だが彼らはそれを分かっていて演っている。分かっているからこそこの筋の好事家には、M-01がキャッチーにすら聴こえるのだろう。逆にM-03は暗黒イメージを逆手に取り、彼らをディフォルメした音世界、と考えることも出来よう。
いつもよりドローンアンビエント色は強いが、〝ギターを用いた強烈な暗黒臭〟なる不動の表現軸を振り回している以上、本作はどうしようもなくSUNN O)))のアルバム。それを利用して、純粋に音だけで自在に立ち回る小憎らしいアルバム。

それに翻弄される我々は愚者。それを見てせせら嗤う彼らは知能犯。

Disk-1
M-01 Hell-O)))-Ween
M-02 Bass Aliens
M-03 Decay 2 (Nihil's Maw)
Disk-2
M-01 B-Alien Skeleton
M-02 Space Bacon Tractor
M-03 Intone
M-04 Hell-O)))-Ween
M-05 B-Witch
M-06 NN)))
M-07 Death Becomes You
M-08 Caveman
M-09 Grease Fire
M-10 Bathory, A Tribute To...
Disk-3
M-01 Funeraeldrone
M-02 Funeraelmarch (To The Grave)

Disk-2とDisk-3は「Live White」なるアルバムCD+シングルCDのプライヴェート盤。ゲートフォールドの紙ジャケ三枚組仕様とは、日本盤は何とも豪華絢爛。


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