2012年4月16日月曜日

CLARK 「Iradelphic」


ミスター前言撤回、クリストファー・ステファン・クラークもとうとう六枚目。2012年作。いつも通り、Warp Records産。
追憶の心を掻き立てるこの妖しいジャケットは、ジュリアン・ハウスによるもの。PRIMAL SCREAMSTEREOLABBROADCASTのアートワークを一手に引き受けていることでつとに有名。Ghost Box Musicなるレーベルのオーナーでもある。

クラブ仕様・ドアッパー路線を引き継いではちゃめちゃ演っていた前作から華麗に掌返し。のっけのM-01からアコギの音色を分断して、多方向から重ねるメロウな音世界には『またやりやがったか!』と聴き手の眉間に皺を寄ること受けあい。
ただ本作は意外にも焦点が絞れている。
三枚目よりも大々的にアコギを始めとした生演奏を用いる一方、いつもより浮遊感を漂わせた上モノ使い。それらに通底するのはメランコリックでダウナーな音世界。元TRICKYの相方で今や客演の女王、マルティナ・トプリー・バード参加の意図さえ掴めそう。
ただ――

あえてココで割って入らせていただく。
そのマルティナ姐さん、M-05、M-06、M-10で例の厭世的な歌声を披露しているが、実はまともに歌詞を歌っているのはM-06のみ。後はワンフレーズをループしてCLARKの男声と重ね合わせたり(デュエットってもっと絡み合うモンじゃないの?)、装飾音としてのスキャットだったりと、すっかりトラックを構成するパーツと化している。
ただし、さすがは百選練磨の姐さん。決してトラックに埋もれず、負の存在感をひしひしと漂わせているのは貫禄か。

話を戻そう。
メロウで生々しくて浮遊感漂う――そう、Warpの先輩・BOARDS OF CANADAやその分家・CHRIST.っぽく響く部分がなきにしもあらず。
でも、CLARKらしさはちっとも失っていない。
分かりやすい部分なら、例えばM-03を聴いて欲しい。主音色は明らかにソレっぽいが、テクスチャーの組み方が全く異質だ。真ん中辺りでファズを噛ませたギターソロのような音色が耳を劈くが、コレなんかもうやんちゃなCLARKならではで、逆にBOCが避けている用い方ではないか。
とは言えBOCっぽいのは事実なので、気のせい! なんて無視は出来ない。この路線はまだ未消化なんだ、と思えばこの先明るい。さすが底を見せないCLARK! などと信者っぽい気持ち悪い思い込みに浸ることも出来る。

だから何に似てるアレにそっくりとかぐだぐだ言ってないで、作品が気持ち良いか面白くないかで判断しやがんなさいよ!

本作の典型であるメロウでダウナーなトラックが、何と自ら独りアカペラ合唱となり締めるM-07。ピアノの一本のみの儚い小曲M-08を挟んで、主音の鳴らし方はそのままに、音色を挿げ替えて並べた連作M-09からM-11に至る流れは圧巻の一言。
現時点で最高傑作――早くもそう言い切る声もちらほら。
『(ぼくが)音楽を作り続ける理由の1つに、最後に出したアルバムに自分が十分満足できなかったからというのがある』 (ライナーより抜粋)
だが本人、これだけのアルバムを創っておいて、まだまだ進化する気満々である。

M-01 Henderson Wrench
M-02 Com Touch
M-03 Tooth Moves
M-04 Skyward Bruise/Descent
M-05 Open
M-06 Secret
M-07 Ghosted
M-08 Black Stone
M-09 The Pining pt1
M-10 The Pining pt2
M-11 The Pining pt3
M-12 Broken Kite Footage

日本盤のみボートラ〝M-13 Lysergic Planes〟収録。
ただしこのボートラが曲者で、何とまあドローンアンビエント曲。せっかくBOCっぽい幽玄なアンビエントのM-12で良い余韻を残して鳴り納めたのに、要らんコトしよる。


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