2012年4月2日月曜日
フィッシュマンズ 「空中キャンプ」
バンド最大のターニングポイントとなった1996年作、五枚目。
デビュー当時はポップなレゲエロックバンドだった彼ら、いくら日本の音楽シーンのサイクルが早いからとて、たった五年でココまで深化するかと。
その深化具合とは、宇宙の如き広がりを持つ音空間でシンプルに鳴らされた、底の見えない音像だ。音のパーツがあちこちから極端な配分で奏でられ、その中心にどっかりと佐藤伸治の個性的な魚系ヴォーカルが構えている。
その佐藤が書く無常観を飄々と綴る歌詞に合わせた、どこか儚い音世界。
コレを皆、〝ダブロック〟と呼ぶ。
レゲエEPのB面として、スタジオ内の遊びから生まれた〝リミックスの元祖〟がダブなのだから、コレは正当進化だ。
よくこのダブ的アプローチが辣腕エンジニアのZAKによって齎されたモノ、という考えもあるが、彼の協力は既に五人組最後のアルバムにして三枚目「Neo Yankees' Holiday」より始まっている。この当時はまだ前述のレゲエロックの彩を色濃く残している。
四枚目「Orange」では、明るくなり切れないレゲエロックが展開されている。これを期に、キーボードのハカセ(現・LITTLE TEMPO)が脱退。四人組最後のアルバムとなる。
なんちゃってライヴ盤の「Oh! Mountain」では一部、ライヴ盤とは思えない極端な音響変換が如何にもダブ的でもある。
で、本作、と。
こうして時系列にリリース作を並べてみると、じわじわと音世界を成長という名の下にシフトしてきた気にさせられる。
ただ本作の高い評価は、一歩一歩着実に階段を上って来た彼らが「Oh! Mountain」――いや「Orange」から一段抜かしの成長を遂げたからこそだと筆者は思っている。
俗に言う〝斜め上を行く〟勢いだったと。
その進/深化は、ZAKの助言と卓加工によって促進されたのかも知れないし、曲創りの主導権を掌握していた佐藤の覚醒からかも知れない。
そんなのどうでもいいのさ。べつになんでもいいのさ。
難しいコト考えてないで、気持ち良いこのアルバムを聴いてほけーっとしてようよ。とりあえず明日はあるんだから。
M-01 ずっと前
M-02 ベイビー・ブルー
M-03 スロウ・デイズ
M-04 サニー・ブルー
M-05 ナイトクルージング
M-06 幸せ者
M-07 すばらしくてナイス・チョイス
M-08 新しい人
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