2014年3月14日金曜日

31 KNOTS 「Talk Like Blood」


オレゴン州・ポートランドの名状し難きスリーピース、2005年作の五枚目。イリノイ州のヘンテコインディー、Polyvinyl Recordsより。

音楽的土壌はエモかオルタナか?
ただ、様々なジャンルの音楽を内包しているが、ミクスチャー臭が一切しない。とにかく先を読ませない異様な曲展開とアルバム構成なのに、違和感や破綻がまるでない。小難しいのかと言うと、奇妙なポップセンスを持ち合わせ、どこか憎めない。お茶目なバンドショットが多いので全編おちゃらけてるのかと思いきや、そのような照れはなく、M-09からM-11にかけての哀愁漂う泣きメロ展開も能くする。
独自性を見出しづらい昨今の音楽シーンで、相似系バンドが即座に思いつかない稀有なバンドだ。FUGAZI meets MODEST MOUSEとか評す声もあるが、あまり的を射てないような気がする。
そんな超個性のバンドを主導するのは、曲の根幹を司り、ギターを掻き鳴らし、たまにピアノを弾き、怒鳴ったりめそめそしたりしながら歌い、奇矯なセンスで組んだローファイループを付け加え、PVでは進んで道化を演じる、ジョー・ヘージだ。彼はいくつもサイドプロジェクトを持っていて、いづれもヘンテコ面白い。実は相当凄い人ではなかろうか。パッと見、存在自体がネタっぽい、アレと紙一重な感じなんだけどね。

で、残りの二人がヘージのバックバンドなのかと問われれば、『俺たちは機械じゃねぇ!!』と本人たちに怒られること請け合い。
長身いけめんのベーシスト:ジェイ・ワインブレナーは忙しなくフレットを上下させ、フィンガーピッキングでぐいぐい曲をうねらせていく。とにかくベースを襷掛けに下げている(たまにギターを弾く)時はひたすら幅を利かせる。『奴(ヘージ)の好きにはさせねえ』とグルーヴィーかつへヴィーに、時にはダンサブルに低音域を牛耳る。ベース弾きはこの人の音を追うだけで十分楽しめそうだ。
一方、前作から中途加入の小柄なドラマー:ジェイ・ペリッチ(愛猫家)は裏打ち/ブラスト自在の器用さと正確さを併せ持つ腕っこきだが、本職はOMDEERHOOFなどを手掛けた音楽エンジニア。無論本作でも(兄弟のイアンと共に)辣腕を揮っていて、彼特有のもこもこしているが各音を把握しやすい、謎の良好な録音状態は健在だ。

奇天烈なバンドなのは確かだが、聴き手を投げっ放しや置いてけぼりや追い払いはしない。曲調も闇雲に複雑化せず、きちんとガイド線を引く親切設計。
きっと良い人たちなんだろうなー、と思う。

M-01 City Of Dust
M-02 Hearsay
M-03 Thousand Wars
M-04 Intuition Imperfected
M-05 Chain Reaction
M-06 Towering Steps
M-07 A Void Employs A Kiss
M-08 Proxy And Dominion
M-09 Talk Like Blood
M-10 Busy Is Bold
M-11 Impromptu Disproving
M-12 White Hot (Bonus Track For Japan)
M-13 Endless Days (Bonus Track For Japan)

海外盤と日本盤は(ボートラ二曲、2004年来日ライヴ映像二曲の有無と)アートワークが異なる。上のジャケ写は日本盤のもの。
さめざめと本編を終えてから、M-12でやや上がり、M-13で再びしっとりと閉じる、ボートラを加えた締め方も乙なので、買うなら是非日本盤を。


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