2014年3月8日土曜日

BATTLES 「Gloss Drop」


2011年作の二枚目。
ジャケデザインは(主に)ベース担当のデイヴ・コノプカ。

周知の通り、キャッチーな声ネタやリアルタイムサンプリングなど、バンドの根幹に値するメソッドを齎してバンドを去ったタイヨンダイ・ブラクストン――この大きな穴を、残された三人がどう埋めるかが焦点になるはずだ、聴き手にとって。
結論から断言させてもらえば、彼らはその穴を埋めなかった。
リアルタイムサンプリングはもう、彼らの血肉と化している。声ネタに関しては外から呼んだ方が、人声という至高の音色の幅が広くなる。
こうして連れて来られたのが、チリ出身だがドイツで名を馳せたクラブDJマティアス・アグアーヨ(M-02。ラテン語で歌ってマス)。まだバリバリ現役! シンセポップ英国紳士:ゲイリー・ニューマン(M-06)。イタリアンの双子男子を統べる日本のロリ声お姉さん:カズ・マキノ(M-08。BLONDE REDHEAD)。行動力と企画力だけは一流のスピリチュアルおじさん:ヤマンタカ・アイ(M-12。BOREDOMS)。
実力のある彼らだからこそ誘えた超豪華メンバーだが、明らかに多種多様な音色を求めた結果であることが容易に見て取れる。
ゆえにブラクストンの急な脱退の余波は大してなかったものと思われる、創り手としては。

ただ、聴き手たる我々からすれば、大きな問題がまだ残っている。
前作からブラクストンのソロを削ったものが本作だとするのなら、何となくあの人懐っこい音色使いが欠けているような気にさせられる点だ。
だがそれがマイナスになったとはちっとも思わない。
おそらく今回、メインの上モノ音色はイアン・ウィリアムスの担当かと思われるが、前作でも裏で暗躍していた彼のねちっこい音色センスは後を引くので、表に立とうがまるで問題ない。今までとは別の切り口で解決済みでさえある。
本作を地味、と評価する輩はブラクストンの即効性が恋しいだけだろう、と筆者は一蹴。

看板を失ったからと言って、その店の質が落ちるとも限らない。
コノプカのドライヴ感溢れるベースループを激しくハイプレッシングするジョン・スタニアーのド迫力ビートに乗っかって、ニューマンが朗々と歌う(横でウィリアムスが小賢しい茶々を入れる)M-06のような、衒いはあるけどストレートな曲が平然と切れるようになったのも、彼らが更に好きに演れるようになった証かと。
ただし、次作はかなり難儀するのではなかろうか。何せ、革新性で売ってきたバンドは常に大逃げを打たねば、世論や評価に潰される傾向がある。

もしや『本作を地味』と評価した者は、彼らの中で思ったより本作が〝逃げを打っていない〟コトを危惧しているのやも知れない。

M-01 Africastle
M-02 Ice Cream (feat. Matias Aguayo)
M-03 Futura
M-04 Inchworm
M-05 Wall Street
M-06 My Machines (feat. Gary Numan)
M-07 Dominican Fade
M-08 Sweetie & Shag (feat. Kazu Makino)
M-09 Toddler
M-10 Rolls Bayce
M-11 White Electric
M-12 Sundome (feat. Yamantaka Eye)
M-13 Sundome (Instrumental) (Bonus Track for Japan)

日本盤のみボートラM-13は、ぶっちゃけアイの声ネタを抜いただけのカラオケなのだが、特に必要なかったのが良く分かる代物。
……え? 何が〝必要なかった〟って? 言わせないで下さいよー。(ニッコリ


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