2011年9月16日金曜日

DALEK 「Obsence」


1トラックメイカー、1MC、1DJからなる異形のヒップホップクルー〝ダイアレック〟の三枚目。2004年作品。
レーベルはマイク・パットン将軍(とそのマネージャー)が所有するIpecac Recordings

だいたい100BPMくらいのゆったりとしつつもアタックの強いブレイクビーツに、説教臭いラップが乗るハーコースタイルが持ち味。
それをハーコーならぬハードコアたらしめているのが、フランジャーでぐしょぐしょに崩しまくったようなインダストリアルっぽいギターノイズを上モノに使うセンス。DJのコスりネタまでそのノイズを使う曲もある。
コレだけでBボーイのみを相手に音楽してないな、と気付く。(本人たち曰く、客層にはちゃんとBも居るそうな)
だからこそIpecacのような何でもアリなレーベルに所属している訳だし、ガッチガチ保守層に守られたヒップホップの裾野を広げるべく奮闘しているのは伝わる。

ただし、ノイズという実体を持たない音をフィーチャーしている以上、キラーチューンという金看板を建てづらい修羅の道が待っている。それは覚悟の上だろうし、前衛的になり過ぎて聴き手を置いてけぼりにしないようバランス感覚を保つ配慮も見え隠れする。
貫いていない、という意味ではない。どうやったら自分たちのスタイルを崩さずに、より多くの聴き手を得られるか。きちんと己の出す音世界に向き合っている真面目な人々、という印象を強く受ける。
ただ残念ながら、それにより裏目に出た決定的な短所がアルバム全体をどす黒く覆っている点を指摘せねばならない。

キャラ立ちすべくDALEKしかない音の軸にノイズを選んだ結果、アレもコレもノイズノイズと、アルバム全体を通して変化がない。
空気が張り詰めているために緊張感は高いが、どのトラックも抱く印象は一緒なのだ。ラッパーのMC DALEKが頑張れば頑張るほどその単調さが顕著になる。
ヒップホップがなぜ〝Featuring~〟みたいにオトモダチを誘って仲良くマイクリレーをするのか、クルー内にMCを複数人抱えるのか、ソロMCはトラックメイカーを使い分けるのか。単なるマイメン自慢ではないはずだ。
彼ら自体それは把握しているようで、ジャーマンロックの雄:FAUSTや、バキバキエレクトロニカ野郎:KID 606、ヘヴィ音楽界の才人:ジャスティン・ブロードリックというまったく違う畑から共演者を選ぶ異端児っぷりを発揮しているが、それを別枠扱いでEPやアルバムにするのではなく――

てめーントコのオリジナルアルバムにちりばめろよ、と。

とまあ、まるで褒めているようには思えない感想をキモに据えてしまったが、筆者はこのアルバムが好きだ。
初聴で『何コレかっけえ!』とハートを鷲掴みに出来るインパクトは十二分にあるし、聴けばがつんと前のめりに力が入る。
その点が、何だかヒップホップじゃないよなあ、と思う。いや、だからこそヒップホップなのか? PUBLIC ENEMYとかRUN DMCあたりのヒップホップ過渡期のような?

M-01 Distorted Prose
M-02 Asylum (Permanent Underclass)
M-03 Culture For Dollars
M-04 Absence
M-05 A Beast Caged
M-06 Koner
M-07 In Midst Of Struggle
M-08 Eyes To Form Shadows
M-09 Ever Somber
M-10 Opiate The Masses


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