2011年11月4日金曜日
AUTECHRE 「Confield」
この際だから、AUTECHRE史上最凶にして最高のアルバム、と言い切ってしまおうか! 2001年発表の六枚目。
何が最凶なのかと言えば、その強烈な怨憎――いや、音像。
まともに拍を刻まないキック。たまに真面目に打ってるなと感心していたら、やがてリズムキープをサボり始める。いや、別にモタっている訳ではないのだが、いつの間にかずるりと崩す。油断も隙もない。
で、背景音に注目して聴けば……夜、独りでトイレに行けなくなる。霊界より、錆びてぼろぼろになった鐸を鳴らしながらこちらに近付いて来る得体の知れない何かの気配を感じる――そんな〝幽〟鬱とした音色使いに背筋が凍る。
M-06のビートの音色が血を啜っているように聴こえた貴方はアウト。
メロディアスな音色を使っている冒頭のM-01、M-02に騙されてはいけない。曲を追うごとにトラックに費やす音が、ひとォつ……ふたァつ……と減っていく。
やがて、トラックの主を担う不確定なキックと、接触不良を起こしているようなスネアと、寒々しい背景トラックだけが残される。
それもやがて――
このアルバムの真ん中辺の曲、主音なくね!? と気付いた貴方はアウト。
さて、何が最高なのかと言えば、主音すら設定せずにトラックを、引いてはアルバムを成立させているその恐るべき構成力にある。
それは、絶妙のアクセントになるキックの乱れであり、冥界からの呼び声を思わせる(本来の役割では)背景音色の旨味である。
普段流されがちなそれらが、きちっと耳を惹く音色として存在出来る訳は……もはや言うまでもなかろう。そもそも必要最低限の音数しか鳴らしていないのに、妥協の産物をぽーんと転がして放置プレイにする余裕などないはずだ。
また、ちゃんと主音を想定して組んでいるトラックもある。それがまた、ガラス細工のように繊細で儚いメロディを有しており、そこら辺はBOLA師匠の薫陶の賜物だな、と。
シンプルなようで、一音一音に恐ろしいほど手間を掛けており、表面は己の姿が映るほど滑らかに磨かれている。
これを「人間味を感じない」と断ずる方は、機械のない原始生活に還った方が良い。
あと日本のみのボートラであるM-10がクラブ仕様のアッパートラックでかっけー! としか言わない方。M-01からM-09までの、神経質なまでに刻まれた音のアーティファクトあっての、相反した輝きだと気付いて欲しい。
でも本作を聴く人全員がかっけー! と震える世界は怖い。おしっこもれちゃう。
M-01 VI Scose Poise
M-02 Cfem
M-03 Pen Expers
M-04 Sim Gishel
M-05 Parheric Triangle
M-06 Bine
M-07 Eidetic Casein
M-08 Uviol
M-09 Lentic Catachresis
M-10 Mcr Quarter (Bonus Track For Japan)
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