2011年11月14日月曜日

JEGA 「Variance」


ジェーガー!
ということで、ロゴもまんまなSkam生まれPlanet Mu育ち、ディラン・ネイザンによる2009年発表の三枚目は、なんと九年ぶりの復活作。すったもんだがあったんデス。
ジャケはネイザン自身の手によるもので、Vol.1のM-04にもある『The Girl Who Fell To Earth』なるタイトルが付けられている。厨二素敵デスネ。

自業自得なのか災難なのかは分からないが、彼は2003年に発表する予定だった3rdアルバムのマテリアルをネットに流出させてしまっている。
その〝すったもんだ〟の鬱憤晴らしで二枚組の大容量になったのかといえば、然に非ず。
本作収録曲は流出した音源に相当手を加えて送り出している。
『The Girl Who Fell To Earth』は#1と#2があり、それぞれ陽/陰になっている。
Vol.1、Vol.2共に、ランタイムが四十分未満(=合わせてもCD一枚で収まる容量)。
以上により、プランが先延ばしになっただけで二枚組は予定事項だったと思われる。

さて本作。せっかくの二枚組を利用して、Light SideのVol.1と、Dark SideのVol.2の二極分裂を音で語っている。
Vol.1はハッピーなアッパートラックかと思えばゆったりとした曲調のメロディアスなトラック群。Vol.2は陰鬱な暗黒無調音楽ではなく刻みが忙しない、金属質バキバキなトラック群。枠組みは客観的に聴いても非常に分かりやすく出来ている。
相違する二つの方向性がきっちり差別化を図って打ち出され、なおかつ違和感を抱かせずに聴き通せる音が創れる才に、まずは拍手。

ただし……ねえ。Vol.1ではさもルーク・ヴァイバートやらBOARDS OF CANADAやらを思わせる音色を、胸張って使っているし。Vol.2ではスクプやらAUTECHREやらを感じさせるテクスチャのトラックも散見される。(ああ、マイクってのも居たねえ……)
Skam→Planet Muと来て、なあああんで俺はWarpにフックアップされないんだあああ!! こんなに頑張ってるのにいいいい!!
――と、こんな風にネイザンの心の叫びが聞こえたような気がするなら、頭を左右に揺すってそんな邪念を振り払っていただきたい。
そうでもないトラックだってあるのだから――ただ『コレはアイツの×××!』とはっきり特定して指差せないだけで。

つまりJEGA、未だ己の音を確立していないのだ。

もうすぐデビュー十五周年を迎えるアーティストに何て言い草だ! と怒られても、そうとしか言いようのないアルバムを切っているのだからねえ。
ならテメー、さっきからJEGAさんディスりっぱなしじゃねえか。そォゆうコト書かねえんじゃねえのかよ、このブログは! と凄まれても困る。
似てる似てないなんて一時的なモノなのに。それを短所として論うつもりなどないのは、過去ログを読めば一貫しているはずなのに。
様々な影響を未だ咀嚼し切れていないからそこかしこに表れるだけで、本格化すればそこら辺もきちんと消化したJEGAの音が提供されるはずだ。過去の賢人もそうやってオリジナリティを獲得してきたのだし。

となると(何もせずにいた訳でもなかったとはいえ)この九年間のブランクは痛い。一人ユニットなのだから、がんがん音源を発表して、己の音を聴き手に刷り込むべきだったのに。
もしかして両極端の音を二枚分提示したってコトは、今後の方向性に迷いが出てるのかなあ。どっちも演って良いのに。
そんなとっ散らかった何でもあり精神が、ニカアーティスト最大の長所なのに。

Vol.1
M-01 SoulFlute
M-02 Antiphon
M-03 Moment
M-04 The Girl Who Fell To Earth
M-05 Sakura
M-06 Eva
M-07 Dreams
M-08 Aqueminae
M-09 Zenith
Vol.2
M-01 Tensor
M-02 Shibuya
M-03 Chromadynamic
M-04 Cascade Decoherence
M-05 Aerodynamic
M-06 Latinhypercube
M-07 Kyoto
M-08 Hydrodynamic
M-09 Reprise


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