2011年11月6日日曜日

BOLA 「Kroungrine」


UKエレクトロニカシーンに君臨すれど統治せず。自由気ままなダレル・フィットン師匠の四枚目。2007年作品。

いつも通り、抜群のメロディセンスを盾にゆったりとしたビートを敷き、暗めの音像と緻密な装飾音で優しく聴き手を包み込むメソッドを堅持。
伝統を今に伝える、安心のBOLA印、老舗の味――
かと思いきや、本作ではようやく師匠、ちょっと動いた。

以前との差異が分かりやすい部分として、例えばM-02(やや奥まっているが、M-05などもそうかも)。前のめりのブレイクビーツに、アタックの強いスネアの音色の選択は今まで見なかった手法だ。中間部でアンビエント風味のキーボードとの噛み合わせは静と動を端的に表していると言える。
またM-04など、小気味の良いトラックに嘘臭いチャイニーズスキャット(!?)を絡ませるという摩訶不思議な創り。この曲は本作中で白眉の出来。
なお、一作目以来久々にアルバムの掉尾を飾る(「Shapes」は編集盤デスヨ)、10分越えの長尺トラックにもその微細な変化が。
今までは主音色を大事に大事に接ぎ、気が付いてみればCDが終わっていた。
だが本作は、継ぎ目を大事に大事に整え、気が付いてみれば主音が挿げ替わっていた。それどころか曲中で幾度か構成を変える、非常に凝った創りなのだ。

だけど大抵、それらに気付かぬままアルバムはしっとりと幕を閉じる。
本当にさり気ない。まるで遊び疲れていつの間にか寝てしまった子供にそっと毛布を掛けてやるお父さんのような創り手だ、フィットン師匠は。

多少マイナーチェンジを施したが、作品を聴けば分かる通り、まるで違和感ない。
彼は常に自分のトラックを客観的に捉え、バランスを崩すことなく無難に着地させることをよしとする人なので、安心して聴き手はそのたおやかな音世界に浸れる。
この安定感こそが師匠最大の武器なのだ――卓越したメロディ使い以上に。

M-01 Zoft Broiled Ed
M-02 Noop
M-03 Waknuts
M-04 Halyloola
M-05 Urenforpuren
M-06 Phulcra
M-07 Rainslaight
M-08 Diamortem


0 件のコメント:

コメントを投稿