2012年3月2日金曜日

TORTOISE 「TNT」


説明不要の亀さん、三枚目。1998年作品。

バンドの首魁〝マッケンさん〟ことジョン・マッケンタイア(Dsなど)が、自らの根城・Soma Studiosに籠もり(M-03とM-08の録音のみ、別のスタジオにて)粛々と執り行ったそのレコーディング、何と1996年11月より開始の1997年11月終了。丸一年も費やしている。
その間、ギターがデイヴッド・パホ(元SLINT。後に自らのプロジェクト・PAPA Mを結成)からあのマズレク大将(本作にも堂々参加)ユニット常連で亀さんメンバー唯一のジャズ畑プレイヤー、ジェフ・パーカーに代わっている。そりゃ誰か飽きるわ。
それはもう難産だったろうさ。苦しかったろう。しんどかったろう。

だが皆さんは少年少女の頃、ゲームに夢中になるあまり、夜更かし、徹夜、あまつさえ学校をサボったりしなかっただろうか?

今では誰もが使っているハードディスクレコーディングシステム〝Pro Tools〟。マッケンタイアの実践投入はSTEREOLAB「Dots And Loops」の方が先だが、TORTOISEでのレコーディングはコレが初。しかも当時、普及しているとは言えず〝魅惑の箱〟扱いだった。
雇われ仕事なら期日はあるが、自分たちの作品なら好き勝手に時間を費やせる!
そりゃもう、レアアイテムゲットやらレベルカンストやらディープダンジョンや裏ルートやらを攻略する勢いで、録音された音(素材)を弄り倒すでしょうよ。Pro Toolsという恰好の玩具を使って、嬉々として。
実はつらくも苦しくもなかったはずさ。楽しんでやがる!

こうして出来上がった作品は非常に端正なモノとなった。
生音を基調としているが、ところどころ打ち込みも噛ませてある。その音色に少々チープな素材を用いているのは、艶も特徴もあるメンバーの演奏と対比させるためであろうか。
This Is TORTOISE!! とも言うべき西部劇ちっくな弦楽器や、シロフォンなどの看板音色を引き立たせるべく、あちこちで打ち込み/生音ない交ぜにした装飾音で聴き手の耳のあちこちをくすぐり続ける。
その生音使いも、いったんハードディスクに取り込んでからループさせたり織り重ねたり鳴らす場所を散らしたりするなど、今では常識となったPro Toolsの編集機能を縦横無尽に使いこなし、嫌味なく構成している。
また、ドラムンベースちっくなビートパターンを組み込むなど、既存の方法論から逸脱するような動きも。
微に入り細を穿つような。

もしかしてこう操れるまで、一年もの実験期間を要したのかも知れない。
そんな地道な完コンプ実験が、後世の録音技術に多大な影響を与えている。与えているからこそ、本作は今でも色褪せぬ超名盤として崇められている訳だ。
いろんな意味で教科書盤。一家に一枚、是非。

M-01 TNT
M-02 Swing From The Gutters
M-03 Ten-Day Interval
M-04 I Set My Face To The Hillside
M-05 The Equator
M-06 A Simple Way To Go Faster Than Light That Does Not Work
M-07 The Suspension Bridge At Iguazu' Falls
M-08 Four-Day Interval
M-09 In Sarah, Mencken, Christ And Beethoven There Were Women And Men
M-10 Almost Always Is Nearly Enough
M-11 Jetty
M-12 Everglade
M-13 TNT (Nobukazu Takemura Remix) (Bonus Track For Japan)

ボートラM-13は原曲のツボをきちんとを捉え、自らの持ち味は最大限に引き出す好リミックスなので、ぜひ日本盤を。


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