2012年3月14日水曜日

ZU 「Carboniferous」


イタリアはローマ市内の港町・オスティア(M-01の曲タイトルになってるね)出身の激烈サックストリオ、2009年作の単独名義としては四枚目。異形の音楽をこよなく愛すマイク・パットン将軍設立のIpecac Recordingsより。
もちろん将軍はとっても出たがりなので、M-06に例の躁鬱ヴォーカルで自ら出陣。M-10では〝声〟という音色使いを披露。おまけにM-02ではレーベル看板バンド:THE MELVINSのギター兼ヴォーカル、バズ・オズボーンも参戦。なお、このギターテイクを録音したのが〝メルヴィンズ第五のメンバー〟トシ・カサイ
イピカックファミリー全面バックアップ。

サックスプレイヤーのルカ(きゃわわな女のコじゃないよ。ごっついおっさんだよ)が吹くのはバリトンサックス。それをベースのマッシモとドラムのジャコポが支える重低世界。野太い音塊が地を這う鈍牛サウンドを想像される方も多いと思う。
だが予想に反して、M-01からいきなりかっ飛ばす、もうがっつーんと。
ジョン・ゾーンばりにイカレたブロウをかましたがるルカ。印象的なフレーズでド低音を徹底して堅守したがるマッシモ。リズムキープは裏打ちばかりな上、キメは小節の末端まで音符を盛り込みたがるジャコポ。
いわゆるマスロック――いや、音の質感からマスコア(日本ではカオティックコアと呼ばれている)の類で扱われることだろう。(ちなみに〝マスロックと〝マスコアは出所が全然違うので注意しようぜ。〝エレクトロニカと〝エレクトロ以上に異なるのさ)

とにかく混沌。複雑怪奇。聴き手の脳裏にずっしり重低音。

だが彼らは、ただ複雑であればいい、テクを駆使して中身がないのをごまかせば良い、なんてちょけた変態バンドでは一切ない。そんなポーザーを変態音楽界の大家、パットン将軍が見込む訳がない。
彼ら最大の長所は〝サックスハードコア〟という唯一無二の編成や高度な演奏技術以上に、どんな相手とも巧く共存共栄出来るスマートさにある。
例えばM-02ではそこはかとなく、バズが所属するMELVINSのカラーを滲ませている、自分たちがこのヴェテランに食われない程度に。M-06は誰と演っても唯我独尊の将軍なので些か分が悪いが、このインストヴァージョンである日本のみのボートラ・M-11を別個の楽曲として成立させている(ルカと将軍のキーが噛み合わなかったらしい)、単なるカラオケに堕せず。
また彼らは、ヒップホップ界の反逆児・DALEKや、元CANの和製ヒッピー・ダモ鈴木や、日本が世界に誇る電子音響の匠・竹村延和など、全く畑違いの相手とコラボを繰り広げる猛者でもある。
そこに飽くなき音楽への探究心と揺るぎない己があるからこそ、誰と組んでも当たり負けしない強靭さを持ち得るのだ。

ヘヴィで、アクが強いのに順応性があり、なおかつ音楽IQが高い。コレがIpecac移籍後初アルバムとは思えないほどレーベルカラーにフィットしている。
スリーピースって良いよね。個性漲るって感じでさ。

M-01 Ostia
M-02 Chthonian
M-03 Carbon
M-04 Beata Viscera
M-05 Erinys
M-06 Soulympics
M-07 Axion
M-08 Mimosa Hostilis
M-09 Obsidian
M-10 Orc
M-11 Vexilla (Bonus Track For Japan)



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