2011年10月30日日曜日

AMON TOBIN 「Isam」


我が道を行くニンジャの番長、六作目。2011年作品。
本作はジャケットのような、昆虫・動物の死骸や植物を用いて創る新進気鋭のコラージュアーティスト、テッサ・ファーマーとのコラボレーション作品である。
輸入盤はファーマーの作品をフィーチャーした、四十ページのブックレット付き豪華仕様が同時発売されている。
CDが売れなくなった今、複合アートとして付加価値を与えるのは良い傾向だと思う。

前作「Foley Room」の軸である(付属のDVDにその録音模様を収録までした)フィールドレコーディングの音色をサンプリングソースとして噛ませるムジーク・コンクレートの手法は既に、前々作でも行われていたらしい。(間抜けな筆者は気付かなかったが)
まずは一枚、触りだけ試してから次、大々的に演る。こうして同じ主題のアルバムを連続して創らず、軸を挿げ替え挿げ替え新風を吹き込んでいくのがトビン流。
となるとムジーク・コンクレートの章は前作で一段落ついたコトになる。

さて、本作は……ダブステップときた!

確かに切り張り音楽であるムジーク・コンクレートと、がったがたでぶつ切りの音像が魅力のダブステップの邂逅は理に適っている。
でもコレ、前作までずーーっとボトムに敷いていたブレイクビーツをすっぱり捨て去ってまでNinja Tuneで演るほどの音なの?
いえいえ何を隠そう、彼はドラムンベースが流行りだした頃、真っ先に飛びついた類のミーハーな世相に敏感なアーティストでもある。
ただ彼は稀代の音キチ様。まんま二番煎じのへちょい音を創る訳がない。

相変わらず音色の数が半端ではない。
“ダブ”ステップと呼ぶからには、音色の出し入れから起こる幽玄で抜けの良い音像になるのだが、そんなコトなどトビンの知ったこっちゃない。
フィールドレコーディングで得た音色(M-04で凄く分かりやすく使われている)や、女性シンガーのや、シンセと卓で加工した音色をがんがん注ぎ込みまくる。
聴き手の脳みそを圧縮せんばかりの音圧を誇るM-03のようなトラックがある一方、ひっそりと波形を感覚で落としていくようなM-11もあったりと、音の振り幅は過去最凶。

既存のジャンルを踏襲しているようで、結局はオレ流を貫いているところが彼らしい。
その潔さに男惚れするも良し。秘めたる部分を濡らすも良し。
ただし、近作だからとこの作品からAMONヴァージンを切るのは止めた方が良い。
やはり彼はNinja Tuneの重鎮。ブレイクビーツを主とした粒揃いの過去作品に触れてからの方が、本作をしっくりと聴けると思う。

そのくらい異色作であり、なにげに問題作でもある。

M-01 Journeyman
M-02 Piece Of Paper
M-03 Goto 10
M-04 Surge
M-05 Lost & Found
M-06 Wooden Toy
M-07 Mass & Spring
M-08 Calculate
M-09 Kitty Cat
M-10 Bedtime Stories
M-11 Night Swim
M-12 Dropped From The Sky
M-13 Morning Ms Candis (Bonus Track)


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