2011年10月12日水曜日

FANTOMAS 「The Director's Cut」


マイク・パットン将軍と愉快な仲間たちの二枚目。2001年作。
お付きのイカレどもはバズ・オズボーン(G:MELVINS)、トレヴァー・ダン(B:Mr.BUNGLE) デイヴ・ロンバード(Ds:SLAYER)。

ご覧の通り、映画/ドラマ音楽のカヴァー集。元ネタに怪奇系や猟奇系が多いのは、将軍の趣味らしい。(マイナー系多くて調べるの苦労した……)
面子の通り、ヘヴィに変態音楽を演るコンセプト。ならばと、重いリフにロンバードお得意のツーバスどこどこが全編繰り広げ――られません。
のっけのM-01から来るぶっ飛ばしぶりに騙されてはいけない。ところどころがつんと襲う展開によりぐっとなれるよう、引きも目立つ。変態音楽ですしおすし。
元々がパットン将軍、誰かサンみたいにアキャアキャ喚いているだけの猿シンガーではない。シナトラばりに朗々と歌い上げるコトも出来る。ニヒルな低いトーンで凄むコトも出来る。子供をあやすような幼児声も出せる。女声にだって化けられる。

これだけ自身が変幻自在なら、演奏陣の引きの方に力を入れねば単なるこけおどしで終わることくらい、変態音楽のマエストロたる将軍は存じ上げているのである。

本作のあり方にしてもそう。
カヴァーアルバムなのだから、まずはオリジナルありき。変態音楽だからと、元ネタを溶解して原曲破壊を繰り広げるのは甘え。「オリジナルで演ればァ!?」の一言で片付けられる。
それではこの試みの意義がまるでない。
〝映画音楽〟という比較的格式の高いお上品な音楽をあえて踏まえて、なおかつ壊す――この斜に構えた落差が本作のキモである。

一聴、はちゃめちゃ演っているようで、緻密な脳内計算を元に動いている。弾ける時は後先を考えて、イケると判断した瞬間、徹底的に破壊する。
同じ能力を持つ獣なら、より知性を持っている方が恐ろしいに決まっている。
マイク・パットンは〝インテリジェント・モンスター〟なのさ。

M-01 The Godfather
M-02 Der Golem
M-03 Experiment In Terror
M-04 One Step Beyond
M-05 Night Of The Hunter (Remix)
M-06 Cape Fear
M-07 Rosemary's Baby
M-08 The Devil Rides Out (Remix)
M-09 Spider Baby
M-10 The Omen (Ave Satani)
M-11 Henry: Portrait Of A Serial Killer
M-12 Vendetta
M-13 Untitled
M-14 Investigation Of A Citizen Above Suspicion
M-15 Twin Peaks: Fire Walk With Me
M-16 Charade

(追記)
本作を踏まえたDVD作品が2011年九月に発売された。音源発表十周年記念! とでも言いたいのであろうか。(いや、素直に欲しいです、欲しいですってば!)
ちなみに当ライヴ映像のドラムはデイル・クローヴァー(MELVINS)に代わっている。


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