おフランスはおパリジャンのジャクソン・フォウジューによる2005年作品。
“ジャクソンと彼のコンピューター楽団”ですって。やだあの方ぼっちよ。ひそひそ。
仏蘭西=御洒落、というのはもはや常識の域にまで達した固定観念だが、彼の出す音も例に違わず。
だが「けっ、スカした野郎だ、気に食わねえ」と嫌悪感を顕わにするのは待って欲しい。
M-02の曲名を見て欲しい。この二十一世紀に何の恥じらいもなく“Rock On!”である。筆者は即座に「こいつあほだ」と思った。非英語圏の人とはいえ、このセンスはあんまりだ。あとM-07とか何なのさ!?
ならあほっぽいセンス爆発のチープでお茶目なクラブサウンド? いやいや、しっかり洒落たゴージャス感溢れるエレクトロニカを演っている。
ココまで書けばもうお分かりだろう。
こいつは変態だ。タキシードでびしっと決めて、真剣な眼差しで卓に向かっているかと思いきや、下半身がブリーフ一丁の類だ。
彼の音はとにかくチョップ。ひたすらチョップ。上モノどころかボトムのビートまでぶつ切る。継ぎ足す。重ねる――もしまだ音楽文明がComputerまで達しておらずテープのままなら、彼はひたすら切り張りしているであろう変質狂ぶり。
おまけに、M-03のように音を左右にパンし過ぎて壊れているのも構わず続けるクラッシャーでもある。
なのに使っている音色は上品である。甘い声色の女性シンガー。勇壮な音色を奏でるキーボード。時折、ビッグバンドから拝借してくるような管弦系の音も顔を覗かせる。
まさしく何トカとアレの紙一重。
いやいや、極端まで振り切るイカレの分際でココまでエレガントなモノを創れる才。いかすぜ、このぼっち野郎! 次はないのか!
M-01 Utopia
M-02 Rock On
M-03 Arpeggio
M-04 Minidoux
M-05 Oh Boy
M-06 TV Dogs (Cathodica's Letter)
M-07 Hard Tits
M-08 Teen Beat Ocean
M-09 Promo
M-10 Tropical Metal
M-11 Headache
M-12 Moto
M-13 Fast Life
M-14 Radio Caca
(追記)
M-13でリードヴォーカルを取り、M-01でコーラス、M-02とM-05で声パーツとしてゲスト参加しているBIRDPAULAさん、実は彼の実母で、現役のフォークシンガーである。ちなみに70年代、フランスに移り住んだアメリカ人だそうな。
最新作は2010年発表の「Give In To Love」。